事故死の兄にささげる…福井、涙の2勝目

[ 2011年5月4日 06:00 ]

<広・横>福井はお立ち台で「亡くなった兄にささげる勝利」と気丈に答えたその帽子には和真・龍一・優也の3兄弟の頭文字を取った「和龍優」が書かれていた

プロ野球 セ・リーグ 広島3-2横浜

(5月3日 マツダ)
 どうしても勝ちたい理由があった。そしてつかんだ白星。重圧から解放された広島のルーキー福井は、お立ち台で声を震わせた。

 「絶対に勝ちたかった。(勝利は)天国のお兄ちゃんにささげたい。泣かないように決めていたけど…」。次兄の龍一さんが、4月20日に25歳の若さで交通事故で他界した。先発を務めた4月24日のヤクルト戦(マツダ)後に訃報を知らされた福井は、28日に岡山県西粟倉村の実家で執り行われた葬儀と告別式に参列。棺にはプロ初勝利の記念Tシャツを納めて最後の別れを告げた。

 そしてこの日。「兄が左投手だったので、しっかり投げるよと気持ちが伝わるように」。マウンドのプレートに左手をそっと置いてから、試合に臨んだ。帽子のつばの裏には和真、龍一、優也の3兄弟の名前を1字ずつ取って「和龍優」と書き込んで一緒に戦った。初回2死一、二塁のピンチでハーパーを空振り三振に斬って勢いに乗った。2回から5回まで3者凡退。気迫がこもったマウンドで直球とスライダー主体の投球で、6回2/3を3安打1失点と好投した。

 03年夏に沖縄尚学で甲子園に出場した龍一さんは、福井にとって目標でありライバルだった。その兄にささげた大切な1勝。「まだまだ勝ち続けます。いつまでも3兄弟でありたいです」。悲しみを乗り越えてプロ2勝目を手にした右腕は、成長する姿と多くの勝利を天国の兄へ届ける。

 ◆福井 優也(ふくい・ゆうや)1988年(昭63)2月8日、岡山県生まれの23歳。済美2年の04年春にエースとして決勝で完投し、甲子園初出場初優勝。同年夏も甲子園準優勝。05年高校生ドラフトで巨人から指名も入団拒否。1浪して早大進学して大学通算11勝。昨年ドラフト1位で広島入りした。1メートル78、78キロ。右投げ右打ち。

 ▼広島・野村監督(福井に)登板間隔が空いていたが新人としてよくやってくれている。

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