イチロー“魔さか”打球見失い捕球できず…

[ 2011年5月3日 06:00 ]

レッドソックス戦の9回1死、ローリーの打球を追い(左)、打球が太陽と重なり見失い捕球できなかったイチロー

ア・リーグ マリナーズ2-3レッドソックス

(5月1日 ボストン)
 マリナーズのイチロー外野手(37)が魔物に魅入られた。1日(日本時間2日)のレッドソックス戦の9回、太陽と重なった飛球を見失うアクシデント。捕球できずに三塁打としてしまい、その後のサヨナラ負けにつなげてしまった。

 「本能的に捕りにいってしまった。太陽があることは分かっていましたから。もう捕ることは難しい。というか(可能性は)ないに等しい。難しい判断だった」

 名手の予感は的中した。「あの場面はずっとそのことを想像していた」。フェンウェイ・パークの午後4時前後は、右翼に西日が当たるため「右翼に魔物が顔を出す」と言われている。1死からのローリーの打球はまさに午後4時を回ったところだった。バットから放たれた直後に視界から消えた。直感だけで落下点には入ったものの、打球は胸の前で構えたグラブにかすることなく、半身の右太腿に当たって右翼ポール際へと転がった。

 「(打球を体の)どこかで止めるのであれば、正対しないといけない。でも半身にしないと(捕球の)可能性はない。みすみすヒットをあげるという印象もつらい。やっぱりトライしないと、というのが強かった」

 最初から単打でいいと諦めがつかなかったのは10年連続ゴールドグラブの名手、イチローだからこその迷いだった。

 連続試合安打は8で止まり、チームも04年以来の敵地6連勝を逃すなど5月初戦は散々のスタートとなった。だが誰もイチローを責める者はいなかった。負け投手となったライトは、ロッカーで考え込む名手に笑顔を向け、勇敢な守備を称えた。

 ≪太陽光安打には伝説も≫フェンウェイ・パークは午後4時前後になると、右翼から見て本塁後方の上空に太陽が位置しており、太陽が沈むにつれて打球が見えづらくなる。太陽光安打が多くなる中で伝説も生まれた。1978年10月2日、レッドソックス―ヤンキースのワンゲーム・プレーオフ。5―4とヤ軍リードで迎えた9回裏の1死一塁。ヤ軍の右翼手ルー・ピネラ(前カブス監督)は西日で打球を完全に見失った。しかし、あたかも普通に捕れるように演技して手前でバウンドしたボールを、必死で押さえて走者は二塁止まり。後続を抑えて勝利したヤ軍は、プレーオフに進出して22度目の世界一に輝いた。ピネラの抜け目のないプレーはその後も語り継がれている。

 ▼レッドソックス・テリー・フランコナ監督 イチローが最も素晴らしい右翼手であることは間違いない。ただ打球が飛んだ瞬間、トラブルになると思った。

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