由規、魂の123球!故郷・仙台に完封勝利届けた

[ 2011年4月21日 06:00 ]

<ヤ・中>3安打完封勝ちのヤクルト由規がつば九郎(右)とファンの声援に応える

セ・リーグ ヤクルト1―0中日

(4月20日 神宮)
 ヤクルト・由規投手(21)が20日の中日戦で9回3安打完封。今季初勝利を挙げ、チームを3連勝で3位タイに導いた。この日はロッテ・唐川侑己投手(21)、広島・篠田純平投手(26)と同じ07年ドラフト1位の4年目投手がそろって完封勝利。デーゲームで3投手が完投完封を飾るのは、97年以来14年ぶり。中でも宮城県仙台市出身の由規にとって2度目の完封は、東日本大震災の被害に苦しむ故郷へ贈る特別な白星となった。

 やっと笑顔になれた。劇的なサヨナラ勝利に、一塁側ベンチにいた由規の顔がほころんだ。123球の熱投はプロ2度目の3安打完封。今季2度目の登板で初勝利を収め、夕闇迫る神宮のお立ち台に上がった。

 「まだかなり興奮しています。何とか勝ちたいという強い気持ちでいった。初回はバタバタしたが、開き直って投げることができた」。最速155キロをマークした初回は3四球で1死満塁のピンチを招いたが、ブランコを154キロ直球で併殺打に仕留めた。相川に「真ん中に思い切って投げろ」と言われて腹をくくった。

 2回以降、制球で自滅した昨季までの姿は消えた。ボール球が先行するとストライクを取りに行って痛打されていたが、走者を背負った3回、6回では森野をいずれもカウント3ボールから凡打に打ち取った。変化球の切れも増している。8回に1死二塁から井端の投ゴロを三塁送球し、二塁走者・堂上剛を挟殺。さらに2死一、二塁となって和田を右飛。危機を脱した切り札はともにスライダーだった。

 大切な人に背中を押してもらった。3月11日の東日本大震災で被災した父・均さん(50)、母・美也さん(51)がこの日午前、宮城県仙台市から車で上京。観戦は登板直前に携帯メールで知らされた。13日巨人戦(北九州)は「仙台出身の僕が頑張らなければ」と気持ちが入りすぎて今季初黒星を喫したが、今回は震災後初の再会を果たした均さんから「しっかり切り替えて投げろ」と励まされた。

 21歳右腕が背負うのは家族だけではない。多賀城市の母校・仙台育英は津波の被害を受け、沿岸部出身の部員もいる。甲子園でバッテリーを組んだ斎藤泉さん(仙台大)は石巻市内で被災し、行方不明のままだ。卒業後も「泉さん」と慕う1学年上の先輩。3月6日に電話で話して以来、再会はできていない。野球部には関係者を通し、等身大の写真が入ったミズノの特大ペナントを18日に贈呈。「1人じゃない。みんながついている」とメッセージを入れた。先発の責務で帰省はできないが、母校の部室には等身大の由規がいる。

 「これで終わってはいけない。1つでも多くの勝利を届けたい。仙台の友達とは、落ち着いたら会いたいねと話しています」。いつかみんなで一緒に笑える日が来ることを信じ、由規は投げ続ける。

 ≪中日との相性抜群≫ヤクルトは由規が9回を3安打無失点に抑え1―0サヨナラ勝利。ヤクルト投手の1―0完封勝利は07年9月4日広島戦のグライシンガー(現巨人)以来。サヨナラ勝ちでマークするのは99年4月16日阪神戦の石井一(現西武)以来12年ぶりとなった。由規の完封は通算2度目だが、前回も昨年8月5日の中日戦。このカードはプロ入り以来通算8試合に登板し3勝無敗、防御率1・92と抜群の相性を誇っている。

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