72年ぶり大会新74安打…東海大相模“感謝のV”

[ 2011年4月4日 06:00 ]

<九州国際大付・東海大相模>優勝を決め抱き合って喜ぶ佐藤(右)と近藤の東海大相模バッテリー

第83回選抜高校野球大会決勝 東海大相模6―1九州国際大付

(4月3日 甲子園)
 東海大相模(神奈川)が、記録的な猛打で春2度目の栄冠に輝いた。九州国際大付(福岡)を相手にこの試合も打線が爆発。14安打を放ち、大会記録を72年ぶりに更新する大会通算74安打で00年以来11年ぶり2度目の優勝を飾った。
【試合結果 組み合わせ】

 東日本大震災による未曽有の被害により、開催の可否が協議された今大会。記録ずくめの圧倒的な強打で、甲子園に名を刻んだ東海大相模・佐藤大貢主将(3年)は、優勝の喜びとともに感謝の言葉を口にして12日間の大会は幕を閉じた。

 いつもの優勝の瞬間とはちょっと違った。最後の打者を三振に仕留めた近藤は、軽くグラブをポンと叩いただけ。捕手の佐藤が飛びついてきたが、歓喜の輪は広がらない。控えめな勝利の儀式。そこには東海大相模ナインによる感謝の気持ちが込められていた。

 「みんな冷静だったけど、自分だけ(感情を)抑えられなかった」。照れ笑いした佐藤主将だが、お立ち台では「開催してくれた高野連の方々、開催を許してくれた被災地の方々に感謝の気持ちを持ってプレーしました。恩返しは精いっぱいプレーすること。自分たちが逆に勇気をもらってプレーすることができた」と感謝の言葉を並べた。

 3月11日に発生した東日本大震災。大会開催が危ぶまれた中「がんばろう!日本」をスローガンに始まった今センバツ。東海大相模ナインは打ちまくった。そして走り回った。

 全力、全速力。その姿勢は決勝戦でも変わらなかった。九州国際大付の好投手・三好を攻略して2本の本塁打を含む14安打を浴びせた。決勝までの5試合で計74安打。春先の大会で、投手有利と言われるセンバツでは更新不可能とまで言われた1939年(昭14)東邦商(現東邦)の73安打を1安打上回った。2ランを含む3打点で今大会13打点の佐藤は「記録をつくろうと思ってやっていたわけではない。僕たちは練習してきたことを徹底しただけです」と振り返って胸を張った。

 震災当日、メンバーは神奈川県庁で表敬訪問中だった。部員、家族らに大きな被害こそなかったが控えの磯網、今井は被災した茨城県出身、野村の両親は青森県在住とあって人ごとではなかった。「何かできることはないか」。部員全員で話し合い、大阪入りする19日、門馬敬治監督に募金を提案。部員46人とスタッフから1000円ずつを集め、約5万円を義援金として被災地に送った。「復興のきっかけのための大会になるように」と佐藤は話した。そんな日本一のナインを門馬監督は「私たちに何ができるのかは分かりません。ただ、大会が開催されて甲子園で野球ができる。必死になってやりました」と話してねぎらった。

 前夜、佐藤は洗濯されたベンチ入り18人分のユニホームと控え部員に手書きのメッセージを添えて、一人一人に感謝の気持ちを記した。

 「自分だけではここまで来られなかった」

 東海大相模ナインが聖地で響かせた快音、そして感謝の言葉、気持ちは、勇気となって被災地へ届いたに違いない。

 ≪東邦商を超えた!≫東海大相模が決勝で14安打を放ち、今大会5試合計74安打。39年に東邦商が記録した73安打を1本上回り、チーム大会最多安打を72年ぶりに更新した。同年の東邦商は大会史上唯一の2試合連続全員安打や全員打点などを記録した神懸かり的な打線。大会73安打は同59得点とともに、もっとも長い間破られていなかった大会記録の一つだった。

 ≪通算塁打も大会新!≫大会最多安打74を記録した東海大相模は、大会通算塁打も大会新の113。昨年、日大三がつくった105を1年で更新した。大会46得点は39年東邦商の59、06年横浜の54に次ぎ、昨年の日大三と並ぶ歴代3位タイ。

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