九国大付・若生監督あと1…被災地へV報告を

[ 2011年4月3日 06:00 ]

<日大三・九州国際大付>ナインに指示を与える九州国際大付・若生監督

第83回選抜高校野球 九州国際大付9―2日大三

(4月2日 甲子園)
 指揮官の悲願は東北の、そして被災地の悲願でもある。決勝進出を決めた九州国際大付の若生正広監督は「三好が最高の投球をしてくれた」と、2失点完投のエースをねぎらった。自身、甲子園での決勝はダルビッシュ(日本ハム)を擁した東北監督時代の03年夏以来2度目。今度こそ、の思いは采配にも表れた。

 「三好の腕は長い。球持ちを長くして回転数を上げれば球は伸び、タイミングが外せる」。前夜、三好と高城のバッテリーを宿舎の自室に呼んだ若生監督はそう告げた。準々決勝で22安打13得点した日大三打線への対策。期待に応えてエースは4試合連続完投に加え、初回に先制2ランも放った。指揮官は野手に対しても前日練習で自ら打席に入り、一人一人の足の位置や球の見極めなどを徹底して指示。試合では相手打者のバットの軌道に応じて、細かく守備位置を変えさせた。右翼の龍は「1球ごとにベンチを見ていた。指示通り打球が来た」と知将の読みの深さに驚いた。

 快進撃。それが生まれ故郷の仙台に、東北に力を与えると信じている。4強進出後、携帯電話に仙台から約100件の祝福の連絡が入った。友人の1人には「家の物は全部なくなったけど、試合は電気店のテレビで見ていたよ」と言われたという。05年に九州国際大付の監督に就任すると、ユニホームのデザインをグレーから東北そっくりの縦じまに変えた。心は常にともにある。抱き続けていた夢も、あと1勝で現実となる。

 春は過去3年連続で九州勢が優勝。しかし福岡県勢は夏は4度優勝も春制覇は1度もなく、若生監督にとっても初優勝が懸かる。「監督に恩返ししたい。絶対に福岡に優勝旗を持って帰りたい」と三好。その紫紺の大旗は、もう目の前にある。

 ≪教え子の東北部長エール≫若生監督の教え子にあたる東北の我妻敏部長も感慨深げな様子だった。仙台に帰郷したナインは、この日もボランティア活動。チームがそろってテレビ観戦することはできなかったが、インターネット速報などでチェックしていたという。「あすもテレビで見ることはできませんが、優勝してほしいです」と恩師にエールを送った。

 ≪福岡勢57年ぶり決勝≫九州国際大付が初の決勝進出。福岡勢の決勝は54年準優勝の小倉以来57年ぶりで、県勢初優勝を目指す。九州勢は08年Vの沖縄尚学、09年Vの清峰、10年Vの興南に続き、4年連続の決勝進出。同一地区校が4連覇すれば38~41年の東海勢(中京商、東邦商、岐阜商、東邦商)以来、70年ぶり4度目となる。

続きを表示

この記事のフォト

2011年4月3日のニュース