西岡独占手記「屈辱あるから、はいあがれる」

[ 2011年4月3日 06:00 ]

<ブルージェイズ・ツインズ>ブルージェイズに完敗した西岡剛らナイン(左はジャスティン・モーノー、右はジョー・マウアー) 

MLBア・リーグ ツインズ3―13ブルージェイズ

(4月1日 トロント)
 ツインズ・西岡が本紙に独占手記を寄せ、1年目に懸ける強い思いを語った。

 緊張はなかった。開幕セレモニーは興奮しました。でも何かが違った。最初の2打席は、自分の中でも感覚が分からなかったし、守備でも、最初からミスをして、流れが向こうにいってしまった。僕がチームのリズムを崩してしまった。

 ただ、失敗をしない野球選手はいない。落ち込んだときに立ち直れる強さを持つことの方が大事だと思う。屈辱があるからこそ、またはい上がれる。僕も一人になると弱い。家に帰ったら落ち込みますよ。でも、常に弱い人間だと自覚しているから、立ち直れるし、切り替えもできる。エラーをした後に、しっかりとヒットを打てたのは、気持ちを切らさずにできたからだと感じている。初安打のボールももらったけど、いつもどこかに行ってしまう。それで一喜一憂はしない。

 メジャーの舞台に立っても日本時代とプレースタイルを変えるつもりはない。日米のレベルの違いや、今までプレーした先輩方が苦労したことも知っている。でも、壁にぶち当たるまでは変えたくないし、そうでなければ、具体的に何を変えればいいかを明確に考えることもできない。

 方向性は間違っていない。そう確信できたのは、マウアーでした。打撃練習を見て、軸足が動かないし、体が投手方向に出ていかない。彼は“体が前に行くと外角が届かない。軸が残っていれば、外側も引き付けて、力の入った打球を打ち返せる”と話してくれた。それは僕が取り組んできたことと同じ。大リーグの舞台に立ったばかりの僕と、過去5年間で3度首位打者を獲得しているマウアーは同じレベルではないですが、求める感覚に違いはなかった。

 実は不本意な成績に終わった09年シーズン後、球団には「来年、優勝して首位打者を獲ったら、メジャーに行かせてください」という話をしました。西村監督にキャプテン就任を要請された時も、野手最年少の自分ではどうかと思いましたが、引き受けました。自分自身にプレッシャーをかける意味もあった。首位打者と日本一で希望はかなえられた。でも、メジャーで一からやり直していいのかと、自問自答する自分もいた。成功の保証はなく、うまくいかずに日本に帰れば、失敗したと言われる。正直怖さもある。でも、僕自身は波瀾(はらん)万丈の人生を歩みたい。

 ツインズはみんなが野球を愛していて、しっかり向き合っている。この日のことをしっかりと切り替えないと、シーズンを通してレギュラーは務まらない。野球は個人が無安打でも勝てるスポーツ。レギュラーシーズンは残り161試合。チームワークを信じて戦っていきます。 (ツインズ内野手)

 ≪先に苦あれば楽≫西岡が色紙にサインとともに書いたのは座右の銘「先憂後楽(せんゆうこうらく)」。もともとは北宋の忠臣、范仲淹(ハンチュウエン)が為政者の心得を述べたもので、常に民に先立って国のことを心配し、民が楽しんだあとに自分が楽しむことを意味する。転じて、先に苦難を体験したものは、後に安楽になれるという意味。現在の西岡にもちょうど、当てはまりそうだ。

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