「人気のセ」のはずが…プロ野球人として大事なものを失った

[ 2011年3月25日 10:00 ]

 【記者の目】未曽有の震災が起こってから2週間。セ・リーグが開幕日を確定するまでに失ったのは時間だけではない。プロ野球人として最も大事なものを失ったのではないか。

 15日の実行委。パ・リーグがいち早く延期を打ち出したのに、強行したいセ側が発表を拒んだという。結局、両リーグの調整はつかず17日に分離開幕を発表。セはその日から猛烈な逆風にさらされた。厳しい電力事情の中でナイター実施。NPB事務局には1日400件を超える批判の電話が入り、セの6球団も同様だった。批判はNPBのパートナー企業にまで及んだ。「こんな中でナイターやるのか!」。それはファンの、そして国民の声でもあった。

 なぜ、セが早期開幕とナイターにこだわったのか。本拠地6球場は被害がなく、3球場は東京電力・東北電力管外。試合を行える環境にあった。プロ野球は興行。東京ドームで1試合流せば損失は数億円に上る。しかも注目される開幕カード。各球団にとって収入減は球団経営に直結する。巨人・清武球団代表は「できるところから野球をやるのは選手、球団の責務であり本能」と言った。経営者の立場からは当然の考え方だろう。しかし、そうした経営理念すら通らなくなるほど日本が震災で受けたダメージは大きかった。

 パは素早い対応で4月12日への延期とナイター自粛を決めた。セとは対照的だ。それがセへの批判を強めたが、楽天の本拠地が被災して25日開幕など実質的に無理という事情もあった。こうした状況下でこそ球界全体を見渡し、指導力を発揮すべきなのが加藤良三コミッショナー。その球界トップが経営者の意向を酌んでしまったのも混乱を助長した。政府からナイター自粛要請を受けても具体的な方向性を示すことなく、選手の意向を酌んで問題が決着したこの日も対応はなかった。

 開幕再延期でセの営業面でのマイナスは確かに痛い。でも、リーグ誕生61年で作り上げた財産を失った方がもっと痛いはずだ。「人気のセ」はもはや死語なのか。(専門委員・秋村 誠人)

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