大きな拍手受け…東北「本当に感謝」さあ開幕!

[ 2011年3月24日 06:00 ]

東日本大震災で被害を受けた東北、東日本地方の代表に、スタンドからエールの横断幕が掲げられる

センバツ開会式

(3月23日 甲子園)
 東日本大震災の被災地から出場の東北(宮城)が、万感の思いで甲子園の土を踏みしめた。「がんばろう!日本」を大会スローガンにセンバツが23日開幕。簡素化されて行われた開会式では、スタンドから大きな拍手が送られる中で東北ナインが堂々と行進した。その後は、東北OBで元監督の若生正広監督(60)率いる九州国際大付(福岡)の第2試合をスタンドで観戦。同校は大会6日目の第1試合で大垣日大(岐阜)と対戦する。

 国旗、大会旗が半旗で掲げられ、選手の左袖には喪章がつけられた。甲子園が静寂に包まれる。午前9時。開催が危ぶまれていた特別な大会は、黙とうで幕を開けた。被災者の思いを背負い、大会出場を決断した東北ナインも万感の思いで祈りをささげた。

 「この状況にいられることを本当に感謝したいです。自分たちの役割は全力プレーや全力疾走だと思う。被災者の方がプレーを見て少しでも頑張ろうと思ってくれれば」

 上村主将は自分たちに課せられた使命を口にした。

 開会式は異例づくしだった。被災者のために球場内に募金箱が6カ所設置され、鳴り物の使用は禁止された。例年なら場内を一周する入場行進は、中堅からマウンド付近まで約70メートルに縮小された。東北の名がアナウンスされると、スタンドからは割れんばかりの拍手が巻き起こった。「関西の人も宮城の人もいい人ばかり。拍手してくれてうれしかったです」。上村主将ら東北ナインは、その短い直線を65秒かけて堂々と行進した。

 開会式後はスタンドから東北OBで元監督の若生監督率いる九州国際大付に声援を送った。練習のため試合途中で引き揚げたが、同校は大会史上初となる1イニング3本塁打など猛打が爆発して7―1で大勝。この結果、大会6日目の第1試合は東北、第2試合は九州国際大付がともに三塁ベンチに陣取ることも決まった。若生監督は試合後「(仙台には)自分の地域のチームみたいに応援してくれる人も多い。故郷の皆さんに元気な姿を見せられて良かった。東北に刺激を与えられたんじゃないかな」と話し、同監督の教え子となる東北の五十嵐征彦監督は「素晴らしい野球を見せていただきました。あらためて教えられた気がします」と大阪入り後、投手陣のマッサージも引き受けてくれた恩師からのエールをしっかり受け止めた。

 被災後は土の上での練習が不足していた。24日は東北の後に練習を予定していた九州学院のキャンセルで、たっぷりと練習することもできる。指揮官は「今は1分でも長く練習したい。試合を6日目にしていただいたので、しっかりと準備して一日一日を大事にしたい」と話す。

 困難を乗り越え、ようやくたどり着いた憧れの舞台。日本中の声援を背に受け、東北の甲子園が始まった。

 ≪生徒会長がナインを先導≫開会式では東北の生徒会長、川名理玖(りく)さん(17)がプラカードを持ち、先導役を務めた。川名さんの自宅も震災で被災。家具が倒れ、ガスや水道、電気がストップした。それでも「みんなを、少しでもバックアップできるように」と野球部と一緒に19日夜に大阪入りした。被災地に残って頑張る仲間を代表しての大役で、スタンドからひときわ大きな声援と拍手を受け「いろいろな気持ちがあって重みがあった。全国の方々に応援してもらえて心強いと思った」と話した。

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