松坂 笑顔なき快投…汚名返上5回零封も複雑

[ 2011年3月17日 06:00 ]

<タイガース・レッドソックス>5回2安打無失点と好投した松坂

オープン戦 レッドソックス2―1タイガース

(3月15日 レークランド)
 レッドソックスの松坂大輔投手(30)が15日(日本時間16日)のタイガース戦に先発し、5回を2安打無失点と好投した。過去2戦で計12失点していたが、5三振を奪うなど球威、変化球の切れが戻った。先発5番手と後がない状況の中で、ようやく結果を残した。ただ、東日本大震災の被災者への配慮もあり、試合後の表情は硬いままだった。

 好投の理由は5日のマーリンズ戦から悩まされてきた首痛がなくなったことにある。「首が痛いと体が動かない。肩も回らなかった」。過去2試合で計12失点。手投げの状態で、改良を重ねるカットボールに加え、スライダーも曲がりが早く、大きくなっていた。

 この日は右肩が回って、下半身の動きとの連動が戻った。打者に近い位置で球を離すことで、球威も切れも増した。松坂は「球に非常に力があったと思いますし、カットボールも良かった。スライダーも曲がりを修正できた」と振り返った。

 だが、笑顔は一切なかった。「本当は笑っていろいろと答えられればいいんですけど、なかなかそういう状況ではない」。東日本大震災の被災者に米国で何ができるのか。連日、岡島、球団スタッフと協議を重ね、球場を出るのは通常より3時間以上遅くなった。支援を呼びかける募金箱を持った登板前日、車で約2時間30分離れた遠征先に着いたのは22時だった。

 大リーグは待ってくれない。先発5番手の立場でありながら、過去2戦の大量失点で、周囲は結果を求めた。「きょうぐらいの投球は首脳陣が最低限、僕に求めている部分だと思う。ここから上積みがあると自分でも思っているし、これぐらいの投球をできるようにしておかないといけない」。日本人であることと大リーガーである自分を両立させる必要がある。

 この日は長男の3歳の誕生日だった。11日にボストンからキャンプ地に来ていた家族も今季初めて試合を観戦した。「息子の誕生日ですし、家族も来ていたので、抑えたいと思っていた」。だが、父親としての思いも素直に表現はできない。

 「スポーツは周りに元気を与えられるものだとは思っていますけど、(被災者は)テレビを見ることすらままならない状態。そういうことも簡単には言えない」

 自分にできることは何か――。日々、自問自答しながら、松坂は野球と向き合っている。 

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