館山 成長の原点は“遊び”がないバーチャル・ブルペン

[ 2011年2月15日 11:32 ]

実際の試合と同じようにイニングとイニングの間の時間を取って、再びブルペンで全力投球する館山

 ヤクルトの館山昌平投手(29)のブルペン投球には、遊びがない。肩、肘の手術を経験した右腕にとっては、練習とはいえ1球も無駄にはできないのだ。14日にブルペンで投じた115球も1球ごとに捕手からサインが出された。イニングやアウトカウント、打者の左右なども想定したバーチャル・ブルペンこそが、ツバメの右のエースへと成長した館山の原点でもある。

 進行状況とサインが、捕手から館山に1球ごとに伝えられた。「右打者、2死一塁でカウント1―1。外にスライダー」。仮想の打者はスイングはしない。結果は三振か四球だけ。予定人数を抑えきればグラブを置いて室内へ戻り、イニング間を想定した休憩を挟む。他の投手の倍以上の時間を要する館山のブルペンは、常に実戦を想定したバーチャル空間で行う。

 「6年前からシーズン中もずっとそう。肩に続き肘のじん帯も断裂しメスを入れた。人よりも投げる肩と肘の体力がない」。09年5完投。昨年はリーグ最多の4完封と鉄人のイメージさえあるが、手術を経験した患部は爆弾を抱える。「練習から1球も無駄にはしたくない」気持ちから実戦想定の投球を導入。限られた球数で実りを求めた結果、多くの副産物も得た。

 サインは捕手任せ。「自分から投げると偏りが出る。そりゃないだろという攻め方もあるけど、固定観念を捨てて幅が出せる」。右に沈むシンカーはブルペンで「フォークを左打者の外角へ」という指示の中で偶然生まれたもの。直球もそうだ。「シュートの後の直球は吹きあがっちゃう。スライダーの後は脇が硬くなり引っかけやすかったり。カウントも作用するし、ある意味同じ直球じゃない」。その対応もブルペンで学び、試合でも生かしてきた。

 186球を要した11日は、延長12回を投げ切った想定だった。「シーズン中は、次に対戦するチームの選手を想定します」と常に見えざる敵を相手にブルペンでミット音を響かせる。爆弾を抱えたからこその創意工夫が、3年連続2桁勝利の右腕を支えている。

 ▼ヤクルト・阿部ブルペン捕手 きょうは普段決め球にあまり使わないスライダーを、フィニッシュに要求してみました。左右の打者4人ずつを2セット。今のは打たれた、というのを伝えることもあります。受ける捕手によって攻め方が変わるので、本人もいろいろな形が見えてくるんだと思います。

 ▽館山の故障歴 日大時代の02年に右肩を手術。プロ2年目の04年キャンプで右肘じん帯を断裂し、リハビリで1年間登板できず。05年オフに右肘を再手術。復帰は翌年5月にずれ込んだ。その後、08年から本格的に先発転向。08年は勝率8割で最高勝率、09年は16勝で最多勝のタイトルを獲得している。

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2011年2月15日のニュース