栗山英樹氏が分析 斎藤の“本能”が見えた11球

[ 2011年2月2日 09:00 ]

クールダウン後、吉井投手コーチ(手前)を座らせて投球練習する斎藤

 斎藤が本能の11球を投じた。日本ハムが沖縄・名護でキャンプインした1日、スポーツキャスター栗山英樹氏(49)がドラフト1位ルーキー斎藤佑樹投手(22=早大)を取材。吉井理人投手コーチ(45)の計らいで実現した、メニュー外のスペシャルピッチングに斎藤の投手としての本能が見えた、と分析した。注目のキャンプ初日。将来への大きな財産を得た貴重な1日だったとした。

 単なるキャッチボールではなかった。グラウンドでの全てのメニューが終わったはずの午後1時すぎ。サブグラウンドの外野に現れた斎藤は、吉井コーチを相手に投げ始めた。最後は座らせての11球。気持ちよさそうな表情からは「自分がやりたいことができた」という思いが伝わってきた。

 斎藤本人も「突然でしたね。“投げないか”と言われたので」と振り返った投球練習は、マウンドからホームまでより少し長めの距離。外野の芝の上で、1球1球を確かめるように投げた。大学までのノーワインドアップではなく、振りかぶっての投球。折れていた軸足(右足)の膝は伸びていた。真っすぐ立ち、重心を軸足にためる。今まで軸足を折ることで取っていた「間」を動きの中で取ろうとしているのが分かる。このオフの間に考えてきたフォーム。一つ一つの体の動きを確認しながらの投球はピッチングに等しかった。

 ブルペン入りしなかったキャンプ初日。プロ1日目を締めくくるこの投球練習は、斎藤にとって大きな意味を持つ。

 400人を超す報道陣が見守る中、初めてとなる1軍の一流投手との練習。この環境では、いくら集中力が高くても知らずにペースが上がってしまう。ハイペースは故障の原因の一つ。初日のブルペン回避はあらゆる要素を配慮した当然の措置だ。でも投げたい。オフにやってきたことを確かめたい。そんな斎藤の投手の本能を吉井コーチが察知したのだろう。

 しかも「暇そうだったから」と誘った練習がメジャー経験のある吉井コーチらしい。キャンプでも投球制限があるメジャー。松坂(レッドソックス)もそうだが、球数を投げたいときにこの手をよく使う。ブルペンとは別に外野で長めの距離で力を入れて投げる。後から投手コーチに「ピッチングしただろ」と言われても「あれはキャッチボールです」。加えて傾斜のあるブルペンより負担の少ない平地。吉井コーチが「こういうところでもピッチングができることを知ってほしかった」と言うように、単に投球意欲を昇華させただけではない。斎藤も疑似ブルペン?という問いに「そうですね」と答え、その意図を把握していた。

 「気温を見てバランスを意識して投げたい」と話した2日の初ブルペンにも、これならすんなり入れるだろう。でも、プロ初日はそれ以上の価値があった。ブルペン以外でもピッチングはできる。記念すべき1日に学んだことは将来必ず生きてくるはずだ。

続きを表示

2011年2月2日のニュース