長谷川氏が分析「試合を決める長打が松井の仕事」

[ 2010年12月16日 09:54 ]

 松井秀喜外野手(36)が加入したアスレチックスとはどんなチームか。同じア・リーグ西地区のエンゼルス、マリナーズで計9シーズンを過ごしたスポーツニッポン新聞社評論家の長谷川滋利氏が分析した。

  ×  ×  ×  
 アスレチックスの野球を簡単に説明すると、四球を選んで走者をため、長打で還す。ビリー・ビーンGMの手法は03年にベストセラーになった「マネーボール」で一躍有名となったが、根本にあるのはいかにして低予算で強いチームをつくるか。本塁打を40本以上打つような選手は資金的に獲得できないので、打率は低いが選球眼がいい選手を集め、少ない好機を確実に生かして得点する。

 ビーンGMが好む選手は、(1)高い出塁率(2)高い長打率(3)勝負強さ――の3点。その意味では、松井はチームにフィットする。ア軍の選手は早いカウントではバットを出さず、3球見逃して1ストライク2ボールにすれば、打者の勝ちという考え方。これは松井の普段のアプローチと同じだ。今季は打率・274ながら出塁率・361はチームトップ。元来、四球が多い打者なので出塁率に関しては心配していない。

 むしろ新天地で求められるのは(2)と(3)。ア軍は今季チーム最多本塁打がクーズマノフの16本で、松井は4番が予想される。ビーンGMは06年にピークを越えたといわれていた38歳のフランク・トーマスを格安の1年契約で獲得。39本塁打、114打点の活躍でチームを地区優勝に導いたが、松井にも同じ役割を期待しているはずだ。ヤンキース時代は前後に強打者がそろっており、出塁を重視していたが、今度は相手投手のマークが集中する中で長打が要求される。

 もう一つは、松井のセールスポイントである勝負強さ。ア軍は00年以降、5度ポストシーズンに進出しているが、一度もワールドシリーズに手が届いていない。「マネーボール野球」は短期決戦では力を発揮できず、近年のア軍に一番欠けていたのが、クラッチヒッター(チャンスに強い打者)の存在だった。投手陣はリーグトップクラスだけに、4番・松井が機能すれば、十分優勝は狙える。(スポニチ本紙評論家)

 ▽マネーボール 03年に米国で出版されたマイケル・ルイス著のベストセラー。ビーンGMによる、独自の選手分析法が描かれている。打率よりも出塁率とOPS(出塁率+長打率)を重視。足の速さや守備力は度外視する。ドラフトでは育成に時間を要する高校生は指名せず、成功率の高い大学生ばかり指名。資金の乏しい球団が金満球団にどう対抗するかを説いた。この分析法で高く評価され、著書にも登場するのがユーキリス(レッドソックス)、スウィシャー(アスレチックス→ホワイトソックス→ヤンキース)ら。

続きを表示

2010年12月16日のニュース