楽天 星野監督「2年目からでいいやと思うと強くならない」

[ 2010年11月10日 13:59 ]

評論家初仕事として、星野監督(右)を取材する平田勝男氏

 楽天・星野仙一監督(63)が就任1年目からの優勝を宣言した。阪神2軍監督を4年務め、今季限りで退団した平田勝男氏(51)がスポニチ評論家に復帰。「初仕事」として、星野監督への単独インタビューを敢行した。明大の先輩、後輩の間柄で、02、03年は阪神・星野監督の下で専属広報を務めた平田氏。そんな固い絆(きずな)で実現した師弟対談。「5、6年かけてええんやったら誰でもできる。スピードがないと本当の改革、再建とは言えない」が持論の闘将に迫った。

 平田――若手主体の秋季練習を見て、楽天の印象はどうですか。
 星野「金の卵がゴロゴロいるなあ。投手にも、野手にも。まだひと皮もふた皮もむかないといけないけれども、この子たちの持ってる可能性は凄いぞ。平田が教えていた(阪神2軍の本拠地)鳴尾浜よりもいい選手は多いぞ」
 ――足の速い選手が多いと聞いています。目指す野球ができそうですか。
 「赤星(憲広)クラスのスピードを持ってる選手が7人はいる。ただ、赤星は足が速いだけでなくスタートの良さや状況判断など技術も高かった。そういう部分はこれからだけどもな。赤星に臨時走塁コーチを頼めないかな。あいつもスポニチの評論家だろ!」
 ――聞いておきます。投手はどうですか。
 「体がでかいのが多い。それと球が速いのが多い。あとは経験。ゲームでどんどん投げさせて経験を積めば、冗談抜きで楽しみなんだよ」
 ――岩隈がポスティング・システム(入札制度)によるメジャー移籍で抜けますが。
 「岩隈は楽天でこれまで功績を残してきた。その上で夢にチャレンジするのだから送り出してあげないといけない。いなくなる選手を考えても仕方がないし、その穴を埋められる素材もいる。片山、井坂、戸村、栂野…。この中から2人、いや3人は大成させたい」
 ――井川(現ヤンキース)を筆頭に阪神時代も“こいつは使える”と思った投手を育てました。今、言った4投手を一人前にする自信はありますよね。
 「ある。みんな藤川球児の若い頃を見ているようなんや。一応、先発でスタートさせて、経験を積ませる中でリリーフをやらせたりもある」
 ――中でも片山は好きそうなタイプですね。
 「ちょっとノンビリしているんだよ。だから気合を入れてピリッとさせたろうと思ってな。楽天はまだ7度目のドラフトだけど、いい指名をしてきているよ」
 ――これまで星野監督はクローザー、セットアッパーと9回から逆算して投手陣を編成してきましたが。
 「そう、問題はクローザーなんだよ。だから今、調査している。日本人選手にはいないな。新外国人を探してくるしかない。中日の宣銅烈、阪神のジェフ・ウィリアムス級のを連れてきてみせるよ」
 ――かなりの戦力補強をされるのですね。
 「枠の中でな。予算があるから誰でも何人でも獲ってくるわけにはいかないし、新しいチームだからそれにふさわしい選手がいいしね」
 ――楽天は補強費がないと、よく聞きますが大丈夫ですか。
「ないことはないんだよ。楽天本社も必要な時は出してくれる。ただ、プロ野球の球団としてまだ若いし、使い方が分からないというか、有効に使えていないから補強していないように見えるだけ。打つ方も補強して、今構想にある7割うまくいけば5点を取れる打線も組める」
 ――1年目から優勝を狙う、そういう補強をしていくのですね。
「当たり前やないか。1年目からや。勝負をしないと勝負にならない。2年目からでいいやと思うと、1年目は強くならないし、育たないし、いい経験もできない」
 ――失礼しました。
「ウチはまだ若いからな。でもその中に金本みたいな選手をポン、松井秀みたいな選手をポンと入れていってやな。そういう存在感のある選手は必要や」
 ――中日、阪神の監督時代に作戦面を担当していた島野(育夫)さん(2007年に他界)が今度はいません。
「そうだな。そりゃあ、島野がいたら今もここに絶対に呼んでいた。でも岩隈と一緒で、いない人のことを言っても仕方がない。今いるメンバーで戦うことしか考えていない」
 ――来年はさらにパ・リーグが楽しみです。
「日本一になったロッテはシーズンでは3位だった。今年は楽天だけ少し離されたけども、パはどこが勝つか分からない。全球団が接近しているし、ウチもチャンスは大いにある。パを面白くしたいし、仙台を、東北を熱くしたい」

 【後記】星野監督を見て驚いた。すでに将としての顔。でもまだスイッチが入った程度。戦闘モードはこれからだろうし、私が知っている星野監督はこんなものではない。
 阪神の監督付広報として2年間そばに付いたが、勝つこと、ファンを喜ばせることをずっと考えていた。思うように選手が成長せず、また甲子園でみっともない試合をした帰路、私は車を運転しながらバックミラーに映る星野監督の「どうしてみようか」との思案顔をずっと見てきた。
 また戦場に戻り、球界の中心で大暴れする。今度の私は評論家という立場だが、星野楽天に期待感でいっぱいだし、しっかり見届けていきたい。

 ◆平田 勝男(ひらた・かつお)1959年(昭34)7月31日、長崎県生まれの51歳。長崎海星では3年春のセンバツで主将として選手宣誓。明大ではベストナインを4度受賞。81年ドラフト2位で阪神入団。83年に遊撃手として定着し、84年から4年連続ゴールデングラブ賞。94年に現役引退。通算成績は979試合で打率・258、23本塁打、220打点。野球解説者を経て97年に阪神コーチ就任。04年にヘッドコーチ昇格。06年からは2軍監督を務め、今季は4年ぶりのウエスタン・リーグ優勝に導いた。顔がミッキーマウスに似ていることから、「ミッキー」の愛称で有名。

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