残り6戦3・5差から!秋山監督、ミラクル舞い

[ 2010年9月27日 06:00 ]

胴上げされる秋山監督

 【ソフトバンク3-8楽天】ソフトバンクが26日、7年ぶり16度目のリーグ優勝を飾った。マジック1で迎えた楽天戦の3回攻撃中、西武が日本ハムに敗れ、決まった。秋山幸二監督(48)の胸に万感の思いが込み上げた。王貞治前監督(70=現球団会長)からバトンを受け、2年目での頂点。胴上げでは、その大きな体が6度、宙を舞った。ソフトバンクは10月14日から始まるクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージに進出が決定。日本シリーズの出場権を懸け、ファーストステージに出場する西武と3位チームの勝者と戦う。

【試合結果


 両手を上げた1メートル86の大きな体が、杜の都の夜空へ、6度舞い上がった。若い選手たちの力強さを背中で感じ、秋山監督は照れくさそうに笑った。その瞬間は午後6時44分に訪れた。3回攻撃中にマネジャーから知らされると目を潤ませ、何度も右腕を突き上げた。144試合目は敗れたが、もう関係ない。奇跡の逆転優勝のシナリオが完結した。
 「宙に舞って気持ちよかったけど、ここまで長かった。1試合も気を抜くことなく、勝ちにこだわった野球をしてきた。その積み重ねが、この日。いやあ、疲れた」
 残り6試合で、首位・西武とは3・5ゲーム差。絶望的な状況だった9月18日からの直接対決3連戦(ヤフードーム)、23日のロッテ戦(同)、ダルビッシュ相手の25日の日本ハム戦(札幌ドーム)まで5連勝。最後は西武が根負けした。
 西武との天王山で「走者を進めてくれ」と指示した小久保が自ら2年ぶりの送りバント。選手たちは自分で考え、行動していた。「理想は自分が何もしなくていい野球。西武の時は1番から9番まで、何をすればいいか知っていた」。思い描いたのは13年間過ごした常勝・西武野球。最後の最後にそのレベルまでたどり着いた。
 08年オフに最下位のチームを任されAクラスへ。2年目の今季はその上を目指すには新たな挑戦だった。西武時代のチームメート・高山投手コーチや、立花打撃コーチらと2軍の全試合のDVDをチェックすることを義務化。支配下全員の把握。自身も没頭のあまり試合前練習に出ない時もあったが、森福らニューヒーローの誕生という成果となった。
 重圧から眠れない日も続いた。ナイター明けのデーゲームだった19日の西武戦前、どんな質問も「答えたくない」とはねのけた。不眠で疲労は限界点に達し、気管支ぜんそくでせき込みながらの戦いだった。1年目も体重が6キロ落ち、オフには人間ドックで精密検査。今季も開幕前90キロ台の体重は、87キロになった。大好きなゴルフも「(並んだ)道具を見ると、目が疲れるんだ」とショップからも足が遠のいた。
 父の威厳を持つ王前監督に対し、「兄貴のような存在が理想」と言葉より行動で示した。1年目の秋季キャンプは97メートルの遠投、フリー打撃ではサク越えなど選手を驚かせた。今年は「最近、打球が飛ばなくなった」と衰えを感じながらも、春先は選手と試合後のウエートルームで積極的に筋トレもした。打つたび背中の骨と骨の間が詰まるような痛みを覚え、整体治療を受けても、バットを振ることは継続した。
 球場へ向かう前、自宅の練習スペースで南国のゴルフ場の絵が描かれた壁へ数球、打つ。数少ない気分転換だ。「2日に1度ラウンドできたら最高だ」とぼやいたこともあったが、頂点のご褒美は思う存分クラブを振れる優勝旅行。その前にやることがある。お立ち台で指揮官自らが宣言した。「日本一を目指します」。プレーオフ、CSと04年から始まったポストシーズンは5度挑戦し、すべてはね返されている。新たな壁を越え、日本一監督への道を歩む。

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2010年9月27日のニュース