「海坊主です!」大谷、パ新人一番乗りのプロ1勝!

[ 2010年4月26日 06:00 ]

初勝利をあげた大谷(左)はアサヒビール・キャンペーンガールの暮沼まみ(中央)から自慢の丸刈り頭をなでられる

 【ロッテ5-3ソフトバンク】ロッテのドラフト2位ルーキーの大谷智久投手(25)が25日のソフトバンク戦でプロ初勝利を挙げた。先発の川越が2回途中に右太腿裏を痛めて緊急降板。急きょマウンドに上った新人右腕は3回1/3を3安打無失点に抑えて首位軍団を勝利に導いた。自らを「海坊主」と呼ぶ丸刈りのルーキーが、パ・リーグの新人で白星一番乗りを果たした。

 寡黙で恥ずかしがり屋なロッテのドラフト2位・大谷が、お立ち台で精いっぱいの声を張り上げた。「千葉マリンの大声援の中で投げられるのは幸せです!どうか、この海坊主をよろしくお願いします!」。丸刈りのルーキーは潮風を感じながら投げる本拠地でプロ初勝利を挙げると、自ら愛称を売り込んで照れた。
 「海坊主?覚えていただければうれしい。親しみを持っていただければ僕は何でもいいんです」
 突然巡ってきたプロ2度目の登板だった。2回無死一塁、先発・川越が右太腿裏の張りを訴えて降板。マウンドに上がるとミット目掛けて黙々と投げ込んだ。直球の最速は138キロもツーシーム、カットボールなどを駆使して3回1/3を3安打無失点。初回からブルペンで準備を進めていたとはいえ緊急登板、さらには負ければチームは今季初の3連敗という重圧をはね返し、パ新人一番乗りの白星を手にした。
 ベンチ裏の通路では、一転してか細い声で「もっといい投球ができたと思う。低めを意識しすぎて球が上ずった」と反省。いつか先発を、という目標も「1年目なんで…」と胸にしまい込んだ。報徳学園では02年センバツで優勝投手となり早大―トヨタ自動車とエリートコースを歩んだ。だが、何度もドラフト候補に挙がりながら、プロ入団は遠回り。社会人時代に左ひざじん帯を痛めるなど挫折も経験したことで逆境に強くなった。
 石垣島キャンプで2181球を投げて猛アピールも開幕2軍。右足にためをつくり、球持ちを良くするフォームに変えて1軍から声がかかると、23日のプロ初登板で1回1/3を完ぺきに抑えて首脳陣の信頼を勝ち取った。
 愛車は「トヨタ・カローラフィールダー」で「活躍しても外車は乗らない。省エネです」と漏らしたことがある倹約家。同じトヨタ自動車出身のヤクルト・中沢、同僚・荻野貴が先に活躍しても「焦りはなかった。コツコツやるのが自分のスタイル」という。雑草のようにたくましく。アマ時代に何度も優勝を経験した右腕が、プロでも大きな戦力となって頂点を目指す。

 ▼トヨタ自動車・川島勝司総監督(現日本野球連盟副会長)大谷も勝ったの?ありゃあ、これは祝杯だね。「あとは大谷」とトヨタのみんなで言っていたんだよ。ちょっとカッとなるところがあるけど、まじめなヤツ。絶対出てくると思っていた。トヨタにとってもうれしい話だ。
 ▼ヤクルト・中沢(トヨタ自動車出身)一緒にやってきた仲間なので本当に僕もうれしいです。お互い意識してやってきたので、早く勝ってほしかった。これからも互いにチームに貢献できるように頑張っていきたい。
 ▼早大・応武監督 心からおめでとうと言いたい。トヨタ自動車に進む際には、決して遠回りじゃないと励ましたこともある。自分のことのようにうれしい。
 ▼報徳学園・永田監督 苦労に苦労を重ねてプロに入団し、1軍に上がるのも遅かったのにこうして1勝を挙げてうれしい。おめでとうございます。努力、努力の子だったのでそのたまものでしょう。
 ▼ロッテ・西村監督 大谷がよく投げてくれた。あの状況(緊急登板)でも落ち着いていましたね。いいものを見せてくれた。
 ▼ロッテ・西本投手兼バッテリーチーフコーチ キャンプと比べてフォームがゆったりして球持ちが長くなった。いい仕事をしてくれた。

 <大谷アラカルト>
 ☆生まれ、サイズ 1985年(昭60)2月14日、兵庫県生まれの25歳。1メートル76、82キロ。右投げ右打ち。
 ☆球歴 西陵中で軟式の大阪大会優勝。報徳学園でエースとして02年センバツ優勝。早大ではリーグ戦51試合に登板して18勝、4年春に最優秀防御率。トヨタ自動車では07、08年に日本選手権優勝し08年MVP。09年は都市対抗準優勝で優秀選手賞。高校、大学、社会人で優勝を経験した優勝請負人。
 ☆入団 09年ドラフト2位。1位は同じトヨタ自動車出身で1学年下の荻野貴。
 ☆丸刈り 早大時代に髪を伸ばした時期があるが「似合わないし、寝癖を直すのが面倒」と基本的に丸刈り。マイバリカンで3ミリに刈り上げ「プロでもずっと丸刈りでいきます」。
 ☆愛読書 中日・山本昌の著書「133キロ怪速球」を持って入寮。自身も直球は130キロ台後半で、投球術を参考にしている。
 ☆背番号 早大の先輩・小宮山氏(野球評論家)が昨季までつけていた14を希望して継承。

 <同一社会人ルーキー勝ち星は3年ぶり>ルーキーの大谷(ロ)がプロ初勝利。同じトヨタ自動車出身の新人では今季中沢(ヤ)も2勝。同一社会人出身の新人がそろって勝ち星を挙げるのは、07年日産自動車出身の青木高(広=5勝)、高崎(横=2勝)以来。また、この日は横浜の新人・加賀も初勝利。ルーキーの同日勝利は昨年5月20日の摂津(ソ=2勝目)、野上(西=初勝利)以来。いずれも初勝利となると、08年5月11日の篠田(広)、宮西(日)以来となった。

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