松井“ただいま弾”NYファン異例の総立ち祝福

[ 2010年4月17日 06:00 ]

<エンゼルス・ヤンキース>2回、松井は本塁打を放ち、ヤンキース・ジラルディ監督(左)らが打球を見守る中、一塁に駆け出す

 【エンゼルス2-6ヤンキース】NYが総立ちで迎えた――。エンゼルス・松井秀喜外野手(35)は15日(日本時間16日)、4番・DHで出場した古巣・ヤンキース戦の2回、4試合15打席ぶりの安打となる先制3号ソロを放った。MVPに輝いた昨年ワールドシリーズ第6戦以来のヤンキースタジアムでの一発。4万4000人以上で埋まった敵地に、異例のスタンディング・オベーションが起こった。今季から敵味方に分かれたが、7年間相思相愛を貫いた男に贈られた喝采だった。

【試合結果


 世界一厳しいニューヨークの野球ファンが、敵の主砲に最大の敬意を払った。2回。松井がヒューズの甘い外角91マイル(約146キロ)直球を右中間席に叩き込んだ。先制の3号ソロ。ピンストライプを脱いだ赤ゴジラが、敵地で祝福に包まれた。
 「もちろん耳には入った。ヤンキースファンにとって相手に点が入ることは、うれしいことではないでしょうけど。ああやって応援してくれることはうれしいですよ」
 03年の交流戦でカージナルスの一員として戻った同じ世界一戦士のティノ・マルティネスも拍手で迎えられたが、松井のように本塁打に対してまでスタンディング・オベーションを受けるのはまれ。この3連戦で最大の歓声だった。
 前日まで14打席連続無安打。この2試合は手の内を知り尽くされたヤ軍の配球に苦しめられた。しかし、第1打席の先制弾でリズムを取り戻すと、2四球と左前打で4打席すべて出塁した。
 球場入りも7年間の在籍時と同じマンハッタンの自宅から。前日は気分転換も兼ね、近所の行きつけの美容院で散髪した。久しぶりにニューヨークの街を歩くと「Welcome back!(お帰り)」「Still love you!(これからも応援するぞ)」とあちこちで声を掛けられた。
 06年の左手首骨折の際には「迷惑をかけて申し訳ない」とナインに謝罪。この日の試合前も時間が許す限りファンのサインに応じるなど、紳士の振る舞いは常に忘れない。昨年のワールドシリーズでヤ軍を世界一に導き、MVPに輝いた姿はファンの胸に刻まれている。愛される理由は多い。松井も4回の本塁突入(結果はアウト)を含む2度の果敢なスライディングを見せ、一発だけでなく全力プレーでも感謝の気持ちを届けた。
 松井が野球人生において、何より大切にするのが勝つこと、そして出会い。「勝って、いいチームメートに出会う。辞めた後に残るものなんてそんなもんだよ」。2日前のリング授与式では、同い年のジーターに模造品とすり替えるいたずらを仕掛けられた。その偽物のリングも、いいチームメートと出会え、そして勝った証として本物と一緒に自宅に保管した。
 だが、感慨にふけるのもここまで。エ軍は61年以来の開幕3カード連続負け越し。古巣にやられ続けては上を狙えない。「やっぱり強い。この経験をどう生かすかですよね」と引き締め、本塁打も「普通の1本」と、言い切った。エールの交換は終わった。次に対戦するときは、ブーイングを浴びるほど打ちまくる。

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2010年4月17日のニュース