左腕王国にまた1人…中沢“新人一番星”

[ 2010年3月31日 06:00 ]

<ヤ・中>力投するヤクルト先発の中沢

 【ヤクルト5―2中日】仲間とハイタッチをするたびに、はにかんだ笑みが浮かぶ。ヤクルトのドラフト1位左腕・中沢が5回1/3を2失点でプロ初登板白星。球団の新人では02年石川以来8年ぶりの快挙だ。

 守護神・林昌勇からウイニングボールを受け取ってお立ち台に上がる。すべてが初めてだった。「きのう(29日)から緊張していました。素晴らしい先輩と同じ白星でうれしいです」。ファンも気温2度の寒さを忘れ、本拠地開幕勝利の立役者を称えた。
 緊張に縛られた体は、大砲の一発で目が覚めた。初回2死一塁でブランコに内角球を左翼席に放り込まれた。「これがプロだと思った」。これで自分を取り戻すと、本来の緩急を効かせた投球が始まった。カーブを見せ球に打たせて取り、4回のブランコとの2度目の対決は、フルカウントからチェンジアップで空振り三振。5回の3者連続三振もチェンジアップで2個奪った。
 球速は140キロに届かないが、多彩な変化球を操る左腕。石川と同じタイプだ。春季キャンプでは尊敬するエースと食事をして野球談議。その中でさらなる緩急の必要性に気づき、125~130キロだったチェンジアップを125キロ以下にすることを決意した。抜き方を工夫しながらオープン戦で試投。この日はほとんどが125キロ以下で、タイミングを外した。
 女房役の相川が「コースならコース、高めなら高めと間違うことがない」という制球力も努力のたまものだ。中大時代はむしろ荒れ球だったが、トヨタ自動車で川島勝司総監督に「投手は走ることが大事」と薫陶を受けて走り込みを徹底。下半身の強化で制球の安定を手に入れた。
 新戦力の活躍でチームは3連勝。高田監督は「よく投げたね。タイミングを外す変化球が良かった」と称賛した。「しっかり投げて勝ち星を増やしていきます」と中沢。かつて「左腕王国」と呼ばれたヤクルトに、また新しい左腕が加わった。

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2010年3月31日のニュース