山崎武「ホッとした…」14点圧勝けん引

[ 2009年10月4日 06:00 ]

<楽・西>お立ち台の(前列左から)中村真、リンデン、渡辺直、セギノール(後列左から)小坂、青山、中谷、草野、鉄平、山崎武

 【楽天14―5西武】心底、安どしていた。「長い年月がたったけど、やっとここまで来られた。ホッとした。肩の荷が下りたよ」。楽天・山崎武の目に涙はない。計10人のトリを飾って上がったお立ち台では「きょうは1人で上がろうと思ったのに10人も立っちゃって…。鉄平がオレの前でボコボコ打つからなあ」と笑った。チームを支え続けた4番打者は、心地よい達成感と脱力感に身をゆだねていた。

 「70いくつ勝つなんて夢の夢だった。1年ごとに進化できたと思う」。今季74勝目。山崎武の38号3ランは、1点差に迫られた5回だ。1死一、二塁で右中間へ。昨年から22打席連続ノーヒットと苦手だった帆足をKOする一発に「やっと大事な試合で1本出たわ」。8回にも適時打を放ち、計4打点をマークした。
 「今のオレは戦力外から始まった。拾われたんだよ」。中日時代は96年に本塁打王。しかし楽天が誕生した04年オフ、当時在籍していたオリックスを戦力外となった。そして楽天へ。06年、野村監督との出会いで生まれ変わった。「ヤマを張って違うボールが来たらごめんなさい。三振でいいんだって」。07年に本塁打、打点の2冠王。今季も41歳シーズンでの最多本塁打記録を更新中だ。
 戦力外の際には1度は引退も決意。しかし愛工大名電の先輩・工藤に説得されて翻意した。その工藤も横浜から戦力外通告をされ、加えて年下の選手から「クビです」「辞めます」との連絡も来る。「電話に出るの、やなんだよな…」。選手としての悲哀を存分に知る男は、不惑を超えても衰えるどころか進化を続ける。ある若手選手はその姿に「言葉でいうタイプじゃないけど、調子が悪ければ早出で打ったりする。武司さんの存在は大きい」。本人も「(先発の)青山を引っぱたいたりもしたよ。そういう若い選手がやってくれてうれしい」と振り返った。
 「クビになった人間が、野村監督から野球を一から教えていただいた。今度は恩返しの番。沙知代夫人が胴上げで死んでもいいと言ってたけど、日本一になってそれぐらい高く上げてあげたい」。プロ23年目。自身も日本シリーズの経験はない。下りたはずの荷をもう一度肩に背負い、山崎武は次のステージに向かう。

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2009年10月4日のニュース