江川“ヤクルト臨時コーチ”五十嵐、由規を指導

[ 2009年2月3日 06:00 ]

ヤクルト春季キャンプを訪問し、由規を指導する江川卓氏

 元巨人投手で野球解説者の江川卓氏(53)が2日、沖縄・浦添のヤクルト春季キャンプを訪問し、“臨時コーチ”を務めた。五十嵐亮太投手(29)のラブコールに応えたもので、五十嵐と由規投手(19)にフォームなどの技術指導を行った。江川氏がグラウンドでプロの投手を指導したのは87年の現役引退後、初めて。アマチュア時代から数々の記録を打ち立てた“元祖・怪物”が指導者として動きだした。

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 ブルペンが「江川塾」と化した。江川“臨時コーチ”が同じ巨人OBの高田監督から贈られたヤクルトのウインドブレーカーを身にまとう。全体練習後に駆けつけた五十嵐へ早速、問いかけた。
 「方法は2通りある。昔のようなストレートを投げるか、コントロールを重視していくか。どっちにする?」
 前者を選択した右腕の目を見つめながら、理路整然と説明を始める。03年に母校・法大などで指導したことはあるが、公の場でプロ相手の本格指導は87年の引退以来初めて。熱のこもった授業は約1時間も続いた。
 今回の“臨時コーチ”は五十嵐のラブコールに応えて実現した。06年の右ひじ手術から完全復活を目指す158キロ右腕はオフに、江川氏の現役時代の映像を取り寄せて研究。作新学院時代に73年春の甲子園で大会通算最多奪三振記録を樹立するなど“怪物”と呼ばれ、巨人でも81年に投手5冠に輝いた江川氏の投球術に注目した。関係者から熱意を伝え聞いた江川氏は、苦手な飛行機に乗って沖縄へ出向いた。
 剛速球復活を選択した五十嵐に対し、セーブ王に輝いた04年時よりも右ひじが下がったために球威が落ちたと指摘。06年の右ひじ手術以来、マウンドのステップを6足半から6足に縮めたところを、全盛期の6足半から7足まで広げるように助言し「ステップを広くすると体が沈んでいく時間ができる。そうするとひじが上がる」と説明した。これには五十嵐も「いろいろ考えたけれど、言われるまでたどりつけなかった答え。(心が)晴れました」と感激した。
 “元祖・怪物”は、07年夏に甲子園で155キロをマークした“新怪物”由規も特別指導した。左足が投球時にインステップになることを指摘。由規は「自分でも何となく感じていたことをシンプルで分かりやすく教えてくれました」と感謝した。
 また、江川氏が現役時代に得意としたカーブの握りを見せると、ブルペン内で見守っていた石川も飛び入り参加。今年はカーブ習得に取り組んでいるだけに「勉強になります」と笑顔を見せた。
 江川氏は報道陣から「ユニホームを着る気持ちになりますか」と聞かれると、笑顔で「復帰はありませんから」と一礼してかわしつつ、言葉を続けた。「みんな若いから悩むんだな。多少でも解消するといいな」。真剣なまなざしは野球解説者の顔ではなく、指導者のそれだった。

 ◆江川 卓(えがわ・すぐる)1955年(昭30)5月25日、栃木県生まれの53歳。作新学院では73年春夏に甲子園出場。同年ドラフト1位で阪急に指名されたが入団拒否して法大に進学。リーグ通算最多17完封、歴代2位の通算47勝をマーク。77年クラウンライター(現西武)にドラフト1位で指名されたが、これも拒否して野球留学。翌78年ドラフト会議前日に「空白の1日」を利用して巨人と契約するも、翌日に阪神が1位指名。コミッショナー裁定により小林繁とのトレードで巨人に入団した。プロでは80年から2年連続最多勝。81年に20勝でMVP。84年の球宴では8連続奪三振を記録。87年に現役引退した。

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2009年2月3日のニュース