女子高生ナックルボーラー吉田がプロ指名!

[ 2008年11月17日 06:00 ]

<関西独立Lドラフト>神戸9クルーズから7位指名を受けた吉田えりはサイドスローを報道陣に披露

 来年4月に開幕する関西独立リーグのドラフト会議が16日、大阪市内で行われ、吉田えり投手(16=川崎北2年)が神戸に7位で指名された。今月下旬に仮契約を交わす予定で、男子プロと一緒にプレーする史上初の女子プロ野球選手が誕生する。年明けには神戸に移住し、転校も検討。サイドスローから繰り出す水原勇気ばりの「魔球ナックル」が野球界の常識を覆す。

 歴史に名を刻んだ女子高生は茶髪にブレザー、ひざがのぞくスカートの制服姿で会見場に現れた。テレビカメラ6台、無数のフラッシュ攻勢に吉田は「凄くうれしい。びっくりした。とても緊張して頭が真っ白です」と日焼けした顔をほころばせた。

 ナックルが指名の決め手となった。今月2日からの関西独立Lトライアウトで1次、2次を女子で唯一突破。実戦形式の最終選考では1回を無安打無失点に抑えた。ただキャピキャピぶりは普通の16歳と一緒だ。同席した元阪神投手、神戸・中田良弘監督が「ナックルがよく落ちる。トライアウトで答えを出したので戦力になると思った」と答えると、吉田は49歳指揮官をつかまえ「ちょっとイケメンかなと思った」とデレデレ。宝物の携帯で「友達に“指名もらっちゃったよ”ってメールしました」とも話した。

 それでも野球への情熱は人一倍だ。「女の子と男の子で意識しちゃう部分もあってキャッチボールの相手がいなかった。辞めようと思ったことはあった」。だが中学3年夏に、漫画「野球狂の詩」を愛読する父・勇さん(45)からレッドソックスのベテラン右腕・ウェークフィールドのビデオを見せてもらい「ナックルで男の人を打ち取りたい」と決心。川崎北野球部には体力的な事情もあり在籍できなかったが、女子野球の道には進まず、クラブチームを経てプロ入りにたどりついた。

 全選手に一律年俸180万円を支給するチームは、環境面でも吉田に全面支援を約束した。こちらもプロ野球初の女性オーナーとなる広田和代さんは「球団職員の家に下宿させることになると思う」。神戸入りに伴い転校することになるが「単位制や通信制で高校卒業資格を取れるようにしてあげたい」と配慮する。

 入団が決定すれば2月の合同自主トレからチームに合流。「いつかはプロ(NPB)でやってみたい」。夢をあきらめなかった吉田が、小さな手で大きな夢をつかんだ。

 ◆吉田 えり(よしだ・えり)1992年(平4)1月17日、川崎市生まれの16歳。小2から野球を始める。中川西中では軟式野球部に所属し、一塁のレギュラー。川崎北に進学後、硬式クラブチーム「千葉熱血MAKING」や「西多摩倶楽部」でプレー後、現在は女子野球のクラブチーム「朝日トラスト」に所属。家族は両親と兄。1メートル55、50キロ。右投げ右打ち。

続きを表示

2008年11月17日のニュース