レオ総力戦で逆転!ナベQ監督 日本一舞い

[ 2008年11月10日 06:00 ]

<巨・西>胴上げされる渡辺監督(中央)

 【西武3-2巨人】ヤングレオが歓喜の日本一に輝いた。3勝3敗で迎えた日本シリーズ第7戦は9日、東京ドームで行われ、西武が巨人を相手に終盤の集中攻撃で逆転勝ち。前身の西鉄時代を含めて4年ぶり13度目の日本一に輝き、就任1年目の渡辺久信監督(43)はナインの手で宙を舞った。シリーズMVPには第4、6戦で勝利投手となった岸孝之投手(23)が輝いた。西武は日本代表として「アジアシリーズ2008」(13日開幕)に出場する。

【試合結果
西武優勝パネル
優勝記念時計


日本シリーズ年度別成績

球団優勝回数・監督優勝回数

 その瞬間、渡辺監督の周りに続々とコーチ陣が集まった。感謝の抱擁。ゆっくりとマウンド付近の歓喜の輪へ加わった指揮官は、ナインとともに天高く人さし指を突き上げる“一番ポーズ”で興奮は最高潮に達した。
 「いけるところまでいこう」で始まった95キロを持ち上げる胴上げは、9度で力尽きたがまさに最高の瞬間。現役時代から合わせて7度目の日本一だが、これまでのどれよりも格別な味だった。
 「チームの思いと、家族の思いと、そしてファンの思いがこの2連戦に凝縮したと思います。就任1年目の、本当にダメな監督を1年間盛り上げてくれて選手には感謝しています。最高のシリーズにできてよかった」
 揺るぎない信念の采配で頂点まで上り詰めた。初回1死三塁。ゴロスタートのサインで三塁走者・片岡を憤死させた。だが、ひるまない。1点を追う8回に先頭の片岡が死球で出塁。定石通りならバントだが、片岡は初球に二盗を決めた。そして1死三塁となって片岡に出したサインは、バットに当たった瞬間に三塁走者がスタートを切る「ギャンブルスタート」。ライナーだと併殺となるリスクも伴うが、2年連続盗塁王の足に懸けた。そして中島の三ゴロで、片岡が同点のホームイン。平尾の決勝打を呼びこんだ。攻撃だけじゃない。8日の第6戦は岸を中2日で中継ぎ起用。逆王手で流れをつかんだ。そしてこの試合は西口の先発起用から石井一―涌井―星野―グラマンを惜しげもなく投入した継投。投手出身の指揮官だからこその大胆采配で日本一に上り詰めた。
 4日の第3戦前のミーティング。渡辺監督は「勝負どころでしか言わない」と出し惜しみ続けた“魔法の言葉”でナインに暗示をかけた。「勝った、負けたで一喜一憂する必要はない。短期決戦は1球で流れが変わるもの。ダメでもまたすぐ切り替えればいい」。短期決戦を知る黄金時代を支えた元エースが口にした重みある言葉。王手をかけられても動じなかったナインの心の支えとなった。
 現役時代に広岡、森、移籍したヤクルトでは野村監督と名将たちの下でプレー。それぞれの野球に対する取り組み方、考え方をいいところだけ抽出。これに“渡辺流”で味付けした。シーズン前に掲げたのが「ミスをとがめない」という、型破りのスローガンだ。打率が2割台前半と低迷するブラゼルと中村を「ダメならオレが責任を取る」と4番と6番に固定し続けた。4年目の涌井は「エースとして大きく育てたい」とシーズン、CS、日本シリーズの“トリプル開幕投手”を任せた。一度決めたら頑として動かなかった。今の主力は4年間の2軍指導者時代にコミュニケーションを取ってきたナインが中心。“信頼”という太いきずなで結ばれているからこそなせる業。ナインの長所を徹底的に伸ばす方針は日本一という形となって実を結んだ。
 指揮官は「去年の時点で1年後の選手の姿は想像したけど、これだけのことは想像してなかった」と笑った。「新人類」と呼ばれた指揮官と、ヤングレオの融合。いきなりの日本一もまだ序章にすぎない。黄金時代復活へ…。渡辺西武の挑戦に終わりはない。

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2008年11月10日のニュース