「幸せだった」王さん今季限りで監督退任

[ 2008年9月24日 06:00 ]

会見でプロ生活50年を振り返った王監督

 ソフトバンクの王貞治監督(68)が23日、日本ハム戦(ヤフードーム)の試合後、福岡市内で会見を行い、体調面の不安と成績不振を理由に今季限りでの退任を表明した。今後も福岡に拠点を置き、要職として球団にとどまる可能性は高い。後任監督は白紙ながら、内部昇格なら秋山幸二チーフコーチ(46)、外部招へいなら前ヤクルト監督の古田敦也氏(43)らが候補となる。

 急きょ設定された会見の席上でも王監督の表情は終始、穏やかだった。
 「チームが生まれ変わる。本来の道筋に戻るためにも、監督交代は避けられないこと。プロ野球の世界に入って50年。1つの道にこれだけどっぷりとつかって心をときめかせてやれたのは幸せだった」。この日午前8時半ごろ、孫オーナーの電話説得にも首を横に振り、突然の退任が決まった。試合前のミーティングに選手、コーチらを慌ただしく集めると、脱帽して深々とお辞儀してから思いを伝えた。
 退任の最大の理由はやはり体調面だった。06年7月、胃がんのため胃の全摘出手術を受けた。07年には「肉体的なものがついていかない」と一度は辞意を決意。この時は周囲の説得に翻意したが今夏、再び体調を崩すと週一度の点滴も増えた。8月14日のロッテ戦(千葉マリン)では胃に食事を詰まらせて休養。翌日には復帰したが、副作用の強い非ステロイド系抗炎症薬を使わなければ立っていられなかった。9月に入って3勝15敗と体調に比例した成績には「私の中の闘いが、選手にもうつってしまったのではないか」と思い悩んだ。
 孫オーナーは慰留の際、成績は不問と説得したが、王監督の考えは違った。「昭和55年もチームが優勝していれば次の年も現役をやっていた。4番の職責を果たせなかったことが大きかった。今回も現場の監督として出処進退を鮮明にすべきと思ってました」。気持ちは現役時と同じだった。
 今後も球団にとどまる方向だ。「福岡は第二の故郷。私の野球人生でもホークスは大きな割合を占めている。できることは100%ホークスへ差し出す」。また「日本球界からも必要とされたら、球団の了解があれば協力すべきと思っている」と話し、要請があればWBC日本代表のアドバイザー的役割を担う可能性もある。
 3年連続Bクラスを脱しての99年の初優勝、日本一は苦難を乗り越えてつかんだ。00年のON対決には日本中が注目。06年にはWBC初代監督としてイチロー(マリナーズ)らを率いて世界一に輝いた。激動の野球人生も残り9試合だ。24日のオリックス戦が本拠地での今季最終戦。試合後、王監督はファンに勇退を報告してから全選手と場内を1周する。「あすはラスト。頑張りましょう」。夢と希望を与えた「世界の王」が有終の白星をつかみにいく。

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2008年9月24日のニュース