木更津総合・田中 天国にささぐ夏切符

[ 2008年7月26日 06:00 ]

<木更津総合・東海大望洋>3月になくなったチームメート・斎藤優太の遺影を手にした田中(左)、山岡は雄叫びをあげながら甲子園出場を喜んだ

 第90回全国高校野球選手権大会(8月2日開幕、甲子園)の地方大会は24日、全国20地区で25試合が行われ、新たに15地区で甲子園出場校が決まった。東千葉大会では木更津総合の左腕・田中優投手(3年)が東海大望洋を完封し、5年ぶり2回目の甲子園出場を決めた。北埼玉大会では本庄一が上尾を下し、春夏通じて初切符をつかみ取った。26日は7地区の決勝戦7試合が行われる。

 【木更津総合2―0東海大望洋】最後は125キロスライダーで空を切らせた。マウンドの背番号11は力強く拳を突き上げ、歓喜の雄叫びを上げた。田中が自己最速タイの136キロ直球にスライダーとチェンジアップを交え、13奪三振完封。五島監督は5年ぶりの夏をもたらした左腕を「本当に田中の好投に尽きる。耐えに耐えた」と称えた。
 亡き後輩にささげる優勝だ。「優太のことを考えた。空から見ていてくれと思った」と田中は言った。今年3月、当時1年生部員だった斎藤優太さんが自宅の火災で亡くなった。投手の後輩でフォームを教えたり、一緒にランニングをするなど苦楽をともにした後輩の死は田中を悲しみの底に突き落とした。野球でも2年春から背負ってきたエースナンバーを奪われるなど不調に陥っていたが、母・十見枝さん(49)の「生きて野球ができることだけで幸せなんだよ」という一言で目が覚めた。「優太のこともあって絶対このチームで甲子園に行こうと思った」と、50メートルの距離を毎日50球繰り返してフォームを固めた。球速は130キロから6キロアップ。斎藤さんの遺影と「21」の背番号が“ベンチ入り”した今大会では4試合26回を投げて33奪三振、2四死球、1失点。抜群の安定感で頂点に導いた。
 「甲子園はずっと行きたかった場所。優太と一緒に行けると思うと素直にうれしい」。田中が見上げた千葉の空は天国の後輩が優勝を祝福するかのように、雲一つなく晴れ渡っていた。

 ▼木更津総合(東千葉)1963年創立。剣道部や卓球部も盛ん。

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2008年7月26日のニュース