エースが帰ってきた!上原3人でピシャリ

[ 2008年6月30日 06:00 ]

<広島・巨人>復帰登板を終え引き揚げる上原(左)は、待ち受けるクルーンのねぎらいを受ける

 【巨人6―1広島】力強いエースの投球がよみがえった。不調のため、2軍で再調整していた巨人・上原浩治投手(33)が29日の広島戦で64日ぶりの実戦登板。6―1とリードした9回に今季初めて救援登板し、3者凡退で退けた。全11球中9球が直球と、本来の力でねじ伏せる投球が戻った。体調面とチーム事情から当面は救援での起用となるが、8月の北京五輪へ向けても大きな復帰登板となった。

 今季初めてリリーフカーに乗り、上原が帰ってきた。いつものように左足でファウルラインをまたぎ、マウンドに上がった。5点リードの9回。64日ぶりの実戦登板は真っすぐで押した。先頭の前田智は遊飛。シーボルを二ゴロ、倉を二飛。決め球はすべて直球だった。
 ハイタッチを終えるとブルペンに直行し、クールダウンのキャッチボール。球場を引き揚げる際の「上原コール」にも表情は変わらなかった。「(ファンの歓声は)複雑やね。まだ1試合だけやから。点差があったからね。競っている時にどんなピッチングができるかだから」
 4月26日の阪神戦(甲子園)で4敗目を喫し、出場選手登録を抹消された。自分にいらだったが2軍の練習では笑顔を絶やさなかった。「へこんでいるけど、若い選手に変な姿は見せられない」と、復帰へのスタートを切った。若手とのノックでは罰ゲームを設定し、高卒4年目の木村正を遠投のパートナーに指名した。100メートルを超える距離に「勘弁してくれよ」と言ったこともあった。先発復帰した今季は、回を追うごとに球速が衰えていた。走り込む日、ウエートで追い込む日。内藤2軍トレーニングコーチとの話し合いで、投げられる体に戻すプログラムを立てていった。
 前向きになろうとした2軍暮らし。だが、決して順調ではない2カ月だった。雨で3度、2軍戦の先発を流し、下半身の張りで登板を回避したこともあった。先発にこだわってきた今季。万全な体調ではなく、チーム事情もあり救援での復帰となったが、受け入れた。久々にコンビを組んだ阿部は「真っすぐが良かったよ」と手応え。借金生活で4位転落というピンチを免れた原監督も「躍動感があった。いいスタートを切ったと思う」とエースを称えた。
 8月には北京五輪が控える。すでに日本代表・星野監督には「短いイニングならいけます」と伝えているが、それを証明するように復帰登板で結果を残した。この日の試合前に約10分間、上原を激励した大野投手コーチも「さすが上原。いい形で戻ってきてくれた。この先の手応えを感じたと思う」と話した。
 帰り際、上原は「自分のことで精いっぱい」と言った。それでも今年初めて、自分が思い描いている投球ができた。真っすぐで押す強気の投球が帰ってきた。意味のある1イニングだった。

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2008年6月30日のニュース