ダル“完封ボール”は妻、いや監督に!

[ 2008年3月21日 06:00 ]

<日・ロ>10奪三振の完封で開幕戦を飾ったダルビッシュ(右)はウイニングボールを梨田監督にプレゼント

 【日本ハム1―0ロッテ】パ・リーグが20日に開幕し、日本ハムのダルビッシュ有投手(21)が日本のエースの実力を証明した。札幌ドームで行われたロッテ戦に先発。出産間近の女優・サエコ夫人(21)ら家族が見守る前で4安打10奪三振と気迫あふれる投球を見せ、球団9年ぶりとなる完封勝利を飾った。虎の子の1点を死守する熱投。生まれてくる子供へ、そして今季から指揮を執る梨田昌孝監督(54)に初勝利をプレゼントした。

 ナインとのハイタッチを終えたダルビッシュが、ゆっくりと梨田監督の元へ歩み寄る。「奥さんに渡そうとも思ったけど、やっぱり監督かなと。(勝てて)本当によかった」。エースは照れくさそうに指揮官にウイニングボールを手渡した。
 2年連続の開幕投手。朝食はサエコ夫人の手作りカレーを食べて出陣した。初回、先頭・西岡をカウント2―0と追い込むと、フォークで空振り三振。「教えてもらったんだから、最初の三振はフォークで取りたかった」と1月に一緒に自主トレを行った野茂(ロイヤルズ)に指導を受けた“新球”を、08年最初の勝負球に選んだ。
 最速153キロの直球を中心に10奪三振。5回には2死満塁と唯一のピンチを迎えるが、152キロの直球で西岡を一ゴロに打ち取って全力疾走でベースカバー。「打たれたら後で何か言われるから何としても抑えたかった。必死で走りました」と間一髪のアウトにガッツポーズ、雄叫びを上げた。
 開幕戦完封勝利は日本ハムでは99年の岩本勉以来9年ぶり、2ケタ奪三振での1―0完封となると、プロ野球史上初の快挙だ。「岩本さんが2年連続でやっているのは知っていた。自分もやってみたいと思っていたけど、これほど難しいとは」。スタンドからおなかの子供とともに声援を送ったサエコ夫人は「よかった。安心しました」と笑顔を見せたが、ダルビッシュは「いい胎教になった?1―0だったし、ハラハラしてたんじゃないですか」と苦笑いした。
 チームには“ダルイズム”が浸透しつつある。線の細い木下、吉川、今成、そして新人・中田らは「ダルさんがやっているから」とウエートトレやサプリメントを積極的に取り入れている。キャンプ中には後輩の部屋に足を運び野球講座、スムーズな体重移動の方法や変化球の握り方をレクチャーした。ダルビッシュの存在そのものがチーム強化につながっている。梨田監督も「交代は全く考えてなかった。点を取った後の7、8、9回をパーフェクトに抑えたのはさすが」と絶賛した。
 “日の丸のエース”には本場・米国も注目し、この日はスポーツ専門局ESPNが取材に訪れた。試合前に星野代表監督から「ケガするな、しっかりケアしろよ」と声をかけられたダルビッシュ。もうどんな快挙を達成しても驚かない。21歳の若者が世界に羽ばたく年が始まった。

 ≪梨田監督感激「重いボールだ」≫梨田監督は04年9月24日の西武戦以来、4年ぶりの公式戦勝利に興奮を隠せなかった。ダルビッシュからウイニングボールをプレゼントされ「重いボールだね。奥さんや、子供も生まれるのにね」と胸を熱くした。お立ち台に立った指揮官の声はガラガラ。「ファンの声援がすごく、ベンチ内で大きな声を出して声がかれたよ」と声を弾ませた。エースの力投がもたらした新天地での初勝利に「144分の1でも大きな1勝。長い道のりだが3連覇を目指していく」と力強く語った。

続きを表示

2008年3月21日のニュース