現実が創作を超えた 直木賞作家・今村翔吾氏が見た侍世界一

[ 2023年3月23日 05:09 ]

今村翔吾氏
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 小説も、ドラマも、漫画も超えた驚きの展開で世界一を勝ち取った侍ジャパン。直木賞作家で歴史小説家の今村翔吾氏(38)がスポニチ本紙取材に、その興奮と物語を生んだ背景、大谷翔平という人物が世界にもたらすものを語った。

 興奮しました。叫びました。奇跡のようなドラマを目の当たりにして、この時代に生きている幸せを感じました。

 私は作家ですから、一番面白い展開を想像します。大勢が7回を抑えた時「ラストの打者はトラウトになるんじゃないか」と口にしました。ダルビッシュが打たれて、大谷が登板し、併殺で巡ってきたトラウトの最終決戦。フルカウントから三振で世界一。夢想はしましたが、実際にこんなことが起こるとは。現実が創作を超えていきました。

 歴史上のことでも、後年「フィクションだったのでは」と言われることがあります。例えば、戦国時代の武田信玄と上杉謙信の川中島の戦い。本当は2人は遭遇していなかったという説があります。そんなことはない。今日の試合を見て、偶然や奇跡のようなことは実際にあってもおかしくないと実感しました。

 その物語を呼び寄せたのは大谷の二刀流への挑戦ではないでしょうか。日々の努力と研さんが彼に最高の舞台を与えたのではないでしょうか。私は、直木賞を受賞した小説「塞王の楯」の中で、「互いに死力を尽くし合った中で、こういう奇跡が概して起こる」というフレーズを書きました。彼の野球への姿を見て、いま、この言葉を思い出しています。

 この物語は、100年後に歴史になるでしょう。そして、大谷は歴史を変えた人物になるかもしれません。歴史上、限界突破した人物が出ると、世界が大きく変わることがあります。大谷の二刀流を見て、世界中の子供の中に、二刀流に挑戦する子が出るでしょう。これまでは「絶対に無理」と笑われていたことです。もうそんなことはありません。指導者も、できる子を止めないでしょう。大谷の活躍は世界に大きな影響を与えました。今後、世界の野球のレベルが大きく変わるような気がしています。 (談)

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