元エリート会社員カップル、ユーチューバー転身の理由は?軽自動車で日本一周中「自分の人生を生きよう」

[ 2023年3月2日 10:01 ]

「One Time Life」インスタグラム(kamu_tabi)から

 YouTubeなどで配信活動を行う人々が増加している近年、特に人気の高まりを見せている「旅行系ユーチューバー」。新型コロナ禍で思うように旅に出ることができない中、まるで旅行をしている気分を味わうことができ、私たちに新たな世界を見せてくれる動画が今、大きな反響を呼んでいる。中には、旅や地域の魅力に惹かれ、勤めていた会社を辞めて一度きりの人生を謳歌する人もいる。軽自動車で車中泊をしながら日本一周をしている「One Time Life」の2人も、人生を見つめ直し、旅に出ることを決意した。人生を変えた決断への経緯や、その覚悟とは。スポニチアネックスの取材に対し、2人が配信活動に懸ける思いを語った。

 2021年11月に仕事を辞め、2匹の愛犬とともに旅をする「One Time Life」は、こーづ&かむのカップルによるYouTubeチャンネル。彼氏のこーづは、一部上場企業でキャリアを積み出世コースを歩んでいたが、仕事に明け暮れる中で「自分は誰のために、何のために精神を擦り減らしてこんなに必死で働いているのだろう」と疑問を抱くようになった。彼女のかむも、20代後半で勤めていたレジャー企業で大役を任されるなど仕事で手腕を発揮していたが、多忙な日々の中で「会社のため、従業員のためと必死に働いているけど、自分のためなのかな」という思いを抱くように。「このままじゃ死ぬときに後悔する」「自分の人生を生きよう」と退社を決意した。

 仕事を通じて出会い、交際に至った2人に共通するのは、「一度きりの人生を後悔したくない」という思いと、「日本一周の旅をしながら日本の良さをこの目で見て経験し、より多くの人に日本の良さを広めて観光業をコロナ前以上に活性化させること」という目標。もともと2人は、これまでのキャリアを生かし「新たなビジネスを始めたい」と語り合っていたという。レジャー施設で働いていた2人が思い描くビジネスは同じで、そのために「発信力を身に着けたい」という思いがあり、YouTubeチャンネルを開設した。

 しかしこれまで配信をしたことも、カメラを触ったこともなかった2人は、まずは2匹の愛犬の日常を配信することに。そのチャンネルでは思うように再生回数は伸びなかったが、カメラワークや編集などのノウハウを、実践を通して身につけた。

 2人が口をそろえたのが「頭で考えるより、まずやってみよう」という考え方。こーづは「YouTubeは編集も撮影も手間がかかり、“費用対効果”がいいものではないだろうなと、始める前から思っていて。でも、今後のビジネスのために発信力は欠かせない。だから、日本一周に出発した…というのも理由の一つです。家にいたら誘惑が多すぎて、YouTube投稿をやめてしまうと思って。日本一周に出てしまえば、やるしかないので」と、追い込む行動力は稀有なもの。また、「一度収益化してしまえば過去の動画を再生してもらうだけでも収入を得ることができる」と、今後のキャッシュフローを想定した上での決断。実際にYouTube収益だけで生活できるチャンネルに成長させていることは、2人のキャリアの高さを物語っている。

 将来的には「地元の農家や企業とつながり、その魅力を伝えたい」という構想を描いている2人。視聴者に楽しんでもらうことを考えた動画を作成しながら、自分たちの構想のための勉強も欠かさない。これまでレジャー会社で働いていたかむは、「これまでは自分が提供する側だったけど、客観的に見ることによって、施設や街がアピールしたいことと、お客様が求めていることは違うのだなと、改めて実感しました」と、勤めていたときにはわからなかった新たな視点で見ることができるという。

 かむは「YouTubeの難しさも痛感しています。会社に所属していることで毎月安定した収入が得られるのはありがたいことだということも実感しています」とした上で、「この活動で得た知識や知見、経験すべてが自分の資産として残っていく」と胸を張る。今後、2人と同じように配信活動を始めたいと考えている人に向けて「Youtubeは、個人でお金が稼げたり、動画編集などのスキルが身についたりする事はもちろんですが、今まで出会わなかった人…視聴者、企業、地元の方々に出会える事が一番のメリットだと実感しています。その出会いによって新たな価値観や将来やりたい事の幅を広げていくことができます」と魅力を熱弁。「私たちも最初は何も分からずのスタートでしたが、投稿してみて初めて気付ける事がたくさんあった」として、「まずは、撮影や編集にこだわらず、動画を投稿することが重要だと思います」と提案した。

 2人が旅しているのは、人生という長い長い道のりだった。「仕事をやめたい人、行きたくない人は本当に世の中にたくさんいると思います。私の場合は、自分の人生をしっかりと生きたいということと、今の人生で死ぬときに後悔はしないかというのが判断軸になりました。今の仕事をしていて“自分が死ぬときに後悔しないかな?”というのもひとつの判断軸になるのかなと思います」と、言葉ひとつひとつに熱を込めていた。

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