カブス・今永 防御率0・84 メジャー史上最高の新人選手 敵将脱帽「打撃コーチに悪夢与える」

[ 2024年5月20日 01:30 ]

ナ・リーグ   カブス1-0パイレーツ ( 2024年5月18日    シカゴ )

パイレーツ戦の7回、雄たけびを上げるカブス・今永(ゲッティ=共同)
Photo By ゲッティ=共同

 歴史的快投が止まらない!カブスの今永昇太投手(30)が18日(日本時間19日)、パイレーツ戦に先発し、7回4安打無失点に封じた。メジャートップの防御率0・84は、防御率が公式記録になった1913年以降、新人投手のデビュー9先発では歴代トップ。勝敗は付かず、日本投手最長の開幕6連勝はお預けも、チームは1―0でサヨナラ勝ちを収めて連敗を2で止めた。

 「学生野球の父」の飛田穂洲(すいしゅう)は「野球とは“無私道”なり」という言葉を残した。自分のことより人のために尽くす――。今永にぴったりの言葉だ。

 7回4安打無失点で白星こそ付かなかったが、両リーグトップの防御率0・84は1913年以降、新人のデビュー9先発時では新人王とサイ・ヤング賞に同時に輝いた81年のフェルナンド・バレンズエラ(ドジャース)の0・91を抜いてトップ。新人以外でも開幕9先発時の数字では歴代6番目の好成績だ。「あまりピンとこない。今聞いてもそういう記録があったんですねという感じ」と話し、「自分が投げた試合でチームが勝った、それが本当に良かった」。登板日のチームはこれで8勝1敗となった。

 ストライク先行でパイレーツ打線を封じ、唯一のピンチは7回2死一、二塁。昨季21本塁打のテーラーに外角低めにチェンジアップを沈め、7個目の三振でピンチ脱出。この回限りで降板となったが、9回のモレルのサヨナラ打につなげた。

 02年の石井一久(ドジャース)、14年の田中将大(ヤンキース、現楽天)に並ぶ日本投手最長のデビューから6連勝は3試合連続でお預けとなり、5月は白星こそ1勝だが、4試合で計26回を投げわずか2失点で月間MVPも視野に。「(防御率は)本当に気にしていない。もっと下げてやろうとか、そんなことは一切思わない方がパフォーマンスは良い」と淡々としていた。

 5勝目を挙げた1日の敵地メッツ戦後はニューヨークが舞台の映画「スパイダーマン」を引き合いに盛り上げたが、この日も“絶口調”だった。「(球場入り前に人気ドーナツ店の)ダンキンドーナツのカフェラテを買うルーティンしかない。声をかけられる活躍をしたい」と明かし、「いつもスモールアイスラテか、ミディアムアイスラテか、(注文が)ころころ変わるやつだな、と思われていると思う」と続け、会見場は笑いに包まれた。

 今永対策に両打ち含め右打者9人を並べた相手のデレク・シェルトン監督は「この男は(相手の)打撃コーチに悪夢を与える。そんなに速くない速球が効果的で、落ち球は本物だ」と白旗を揚げた。無欲のままにマウンドに上がる左腕が、全米を驚かせ続けている。

 ≪直球は「ハリー・ポッター」の吹き飛ばし呪文≫米国の野球ファンの間で「ピッチングニンジャ」として有名な、弁護士で投球分析家のロブ・フリードマン氏が今永の92マイル(約148キロ)の直球を「エクスペリアームス」と表現した。映画「ハリー・ポッター」でおなじみの相手のつえを吹き飛ばす呪文で、5回にトリオロが空振り三振した勢いでバットが三塁ベンチ方向へ飛んでいく様子の動画を添えた。直球の平均球速は全体229番目の92.1マイル(約148.2キロ)と速くないが、噴き上がるような球質で打者を圧倒している。

 ▽ダンキン 42カ国に約1万2900店舗を展開する世界最大のドーナツ、コーヒーチェーン。1950年にダンキンドーナツとして米マサチューセッツ州で設立され、19年にダンキンに改称。日本では1970年に初の海外店舗として東京・銀座にオープン。その後、ドーナツ業からは撤退した。サーティワンアイスクリームは関連会社。

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