韓国の応援グッズに変化 環境への配慮とコロナ禍がきっかけに

[ 2024年5月7日 11:00 ]

「ビートバット」を手にスタジアムで声援を送る韓国のプロ野球ファン(ストライク・ゾーン提供)
Photo By 提供写真

 【室井昌也 月に2回は韓情移入】国際大会が近づくと、韓国プロ野球の観戦の様子がテレビなどの映像で伝えられることがある。細い棒状の風船「スティックバルーン」を使った観客の姿が印象に残っている人もいるだろう。しかし現在、その光景を見ることはほとんどない。スティックバルーンの使用が禁止されているからだ。

 以前は韓国の応援アイテムの定番だったスティックバルーン。球団のシンボルカラーにロゴマークがデザインされ、浮き輪やビーチボールのように空気を出し入れすることで繰り返し使える商品だ。一方で球場外の露天商などが販売する使い捨てのスティックバルーンを購入し来場する観客もいた。それが問題視された。

 野球場には連日たくさんの人が訪れ、大量のごみが排出される。その点を環境団体が指摘。それを受けてリーグを運営する韓国野球委員会(KBO)と国の行政機関である環境部は昨年4月、使い捨て用品の使用削減を目的にスティックバルーンをはじめとした、ビニール製の応援グッズの使用禁止を申し合わせ事項として定めた。

 代わってファンが手にしているのは日本でも「ツインバット」や「カンフーバット」と呼ばれるプラスティック製の商品だ。その中で異彩を放つのがKTウィズの「ビートバット」。長さ30センチ程で応援バットは2本1組だがこちらは1本。LEDライトが内蔵された電池式であることも異なる。

 「光るグッズ」はNPBの球団でもライティングイベント実施時に販売されることがあるが、試合中は使えないケースがほとんどだ。しかしKTのビートバットは応援グッズとしてプレー中も使用が認められている。

 KTが同商品を発売したのは21年。きっかけは「コロナ禍」だった。KT球団広報チームのソン・スミン課長は「無観客や人数制限でファンが球場に来られないので、“オンタクト(リモート。非対面の造語)応援”で一緒に盛り上がるために作りました」

 KTでは感染症拡大の影響下、自宅で中継を観戦するファンと「Zoom」でつないで応援する様子を球場内の大型ビジョンなどに映し出した。ファンはビートバットと球団公式スマホアプリをペアリング(Bluetooth接続)し、球場でチアリーダーが持つビートバットと同じ色を自動点灯させて応援を楽しんだ。

 ソン課長はビートバットについて「ファンと直接会えなくても、一体感を生み出すことができました」と当時を振り返った。現在は球場で使用することで赤、白、青、緑といったカラーが自動的に切り替わる。

 現行商品はヘッド部分が球団マスコットになっていて価格は3万5000ウォン(約3850円)。別売りの単3電池3本(球場内でも販売)を使用する。ビートバットでKTを応援していた男性は「ヒットやホームランの時に振動するのでテンションが上がる」と話した。

 今季のKBOリーグは好況だ。観客数は昨年の同時期より約3500人多い、1試合平均1万4154人(5月4日現在)。NPBと比べると見劣りするが、日本の半分以下の人口、球場の収容人員1~2万人台でのこの数字は過去最高の水準だ。

 盛り上がりを見せる今季のKBOリーグのスタンド。ファンは新アイテムを手に選手に声援を送っている。

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