中畑清氏 いじめ&暴力から野球を守るため明確なメッセージを

[ 2023年11月28日 05:00 ]

中畑清氏
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 【キヨシスタイル】3月のWBCで3大会ぶりの優勝という素晴らしいスタートを切った2023年。11月の「アジアプロ野球チャンピオンシップ」も優勝で締めくくった。プロ野球界にとっては最高の一年だったのに、最後にこんな悲しいニュースが飛び込んでくるなんて…。楽天・安楽のパワハラ疑惑だ。

 報道されている行為が事実だとしたら、言葉を失う。若い選手の尊厳を踏みにじるいじめ。コンプライアンスが求められる今の時代に、しかもプロの世界で、こんなことがあるのか。ショックと同時に憤りを覚える。言語道断の愚行。それをたしなめ、やめさせる首脳陣、チームメートはいなかったのか。

 縦社会のスポーツの世界。昔から大なり小なり暴力やいじめがあった。つい先日、51年ぶりに再会した友がいる。駒大野球部の同期生。野球センス抜群の内野手だった。すぐレギュラーになり、将来はプロ野球選手になるんだろうなと思っていたら、1年生の8月に突然退部した。

 それっきり会うことなく半世紀が過ぎ、知人の知人の同僚といった関係で線がつながっての再会。

 「ずっと気になってたんだ。お前、なんで野球部やめたんだ?」と聞くと「先輩の暴力だよ」。

 鈍感な私はボコボコにされても指導の一環と思って我慢したが、繊細な彼は耐えられなかったのだ。70歳になった今も草野球を楽しんでいると聞いて少し救われたが、暴力やいじめでプロ野球につながる道から離れていったのは彼だけじゃないと思う。

 野球人口の減少が危惧されている今、子供からプロまで全ての野球からいじめや暴力を根絶しなきゃいけない。そう痛感していたところに起きた今回の一件。楽天球団は本人から事情を聴くと同時に、選手、スタッフら約100人を対象にアンケートを実施したという。

 そのうち球団として何らかの対応をすると思うが、楽天一球団の問題で済ませちゃいけない。球界全体の問題と捉え、今こそコミッショナーにリーダーシップを発揮していただきたい。

 野球界全体を、子供の夢を守るためにどうすべきか。プロ野球の最高責任者として、球界はいじめや暴力に対して“こう対処する”という明確なメッセージを送ってもらいたいのだ。(スポニチ本紙評論家)

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