阪神・大山 涙の栄冠! 悪夢の過去とはおさらば 殺気すら漂ったクラブハウスに4番の矜持が

[ 2023年9月15日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神4―3巨人 ( 2023年9月14日    甲子園 )

<神・巨>涙を流す大山(撮影・岸 良祐)
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 阪神・大山は熱い涙を浮かべ、全身で歓喜を味わった。7年目でようやくたどり着いた頂点。心から感慨に浸った。

 「本当によかった。(指名時に悲鳴を受けた)ドラフトや、最下位(18年)も、いろんな経験をしましたし、優勝できてうれしい」

 値千金の1点を生んだ。6回1死一、三塁で優勝を決める決勝の中犠飛を打ち上げた。大歓声に押され、白球が伸びた。三塁から近本を本塁へ迎え入れるには、十分な飛距離だった。

 「4番・一塁」で固定され、ひたすら自分自身と向き合った一年だった。日々異なる体の声に耳を澄まし、最善の準備、そして結果へつなげた。

 「自分に“敏感”になっていきたいという思いがある。そこをしっかり感じながら、打撃練習、守備、アップの仕方を考えてやっていきたい」

 試合前練習を終え、プレーボールまでの約2時間も無為に過ごすことはない。クラブハウスでもほとんど私語をせず、深く自分の世界に入り込む。ベンチへと向かう直前まで入念にストレッチ。チームメートは「声をかけることすらはばかられた」と明かすほど。やるかやられるかの舞台に、緩んだ空気は必要ない。その姿からは常に殺気すら漂った。

 「その日によって体の調子も違う。自分の感覚でしかないので、しっかり感じながらやっている」

 試合に入れば誰よりも声を出した。投手を一人きりにさせないよう、先輩・後輩を問わず何度も一塁からマウンドへ足を運んだ。ピンチで右の長距離砲を迎えた際、投手から「大山ならどう対応する?」と助言を求められたことも少なくない。その都度「自分ならこうする」と助言。勝つためなら経験や考えを惜しみなく差し出した。全ては仲間と心から喜べる日を目指していたからだ。

 残り15試合、そして決戦の秋へ――。涙を拭った目は既に、はるか先へと向いている。(八木 勇磨)

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