【スポニチスカウト部(29)】日大三・安田虎汰郎 努力の証 宝刀シンカー

[ 2023年8月22日 06:30 ]

今夏甲子園での鳥栖工との2回戦で力投する日大三・安田

 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第29回は今夏の甲子園で16強入りした日大三(東京)のエース安田虎汰郎投手(3年)。伝家の宝刀・シンカーを武器に、聖地で一躍主役候補へと躍り出た右腕の魅力に迫る。 ドラフト速報

 直球の最速は143キロ。だが、面白いように空振りを奪う伝家の宝刀・シンカーを決め球に、夏の甲子園1回戦の社(兵庫)戦では今大会完封一番乗りを果たした安田。ユニークな性格は多くの高校野球ファンからも愛され、一気に夏の主役候補へと躍り出た。

 春夏通算39度の甲子園出場を誇る日大三の背番号「1」を背負うが、決してエリート街道を歩んできたわけではない。中3時は強豪校からのオファーがないまま夏休みを迎えようとしており「地元(千葉県)の公立校に行くんだなと思っていた」。全国大会への出場経験もなければ当時の最速は120キロ。強豪校入りを諦めかけていた6月に練習グラウンドへ現れたのが当時は部長だった三木有造監督だ。能力が突出していなくても「顔つきです。真面目そうでうちに来れば伸びると思って」と安田と握手し、日大三入りが決まった。

 剛速球が投げられなくても豊富なスタミナと変化球の切れで勝負しようと、全体練習後は毎日3キロ走ることを日課にしてきた。憧れでもある11年夏の甲子園優勝投手でOBの吉永健太朗氏のシンカーは何度も動画を見て研究。今年1月には直接指導も受け「握りを教わり、変化量などはだいぶ変わった」と手応えを語っていた。

 周到な準備も安田の好投を支えてきた。今夏の西東京大会では対戦校のビデオを見てノートにまとめ、打ち取り方のイメージを頭に叩き込んで試合に臨み、2年連続の甲子園出場へ導いた。聖地に入ってからもこのルーティンは変わらず、宿舎のホワイトボードに1人で対策を書き連ね、全国の舞台での好投へとつなげた。

 甲子園では決め球・シンカーに注目が集まるが、この球を生かすために陰の努力を惜しまない姿が躍進へとつながった。「高校卒業後はどうなるんでしょうね」。西東京大会前はそう話していた右腕だが、見事に野球人生を大きく変える夏にしてみせた。(村井 樹)

 ≪投球術の秘訣は記憶力と探究心≫驚異的な記憶力と、人一倍の探究心で名門・日大三のエースの座をつかんだ。歴代首相を暗唱できるほどの記憶力は野球にも生きており「対戦した打線はだいたい頭に入っている」。公式戦で初めて対戦する相手でも練習試合で戦った打線を思い浮かべ「似ている打線をイメージすることで攻め方などが見えてくるんです」と笑み。試合後には敵チームの主力打者の元へ駆け寄ることが安田の楽しみで「自分の変化球の軌道や直球がどう見えていたか聞いて次に生かしています」と高い投球術の秘訣(ひけつ)を明かした。

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