【スポニチ潜入(16)】天理大・森浦 元巨人・杉内タイプ左腕 脱力投法で全力アピール期す

[ 2020年6月29日 10:00 ]

天理大・森浦大輔投手

 スポーツニッポン新聞社がお届けする記事と動画を連動した企画「スポニチ潜入」。主に関西圏のアマチュア野球選手を紹介する本日公開の第16回は、最速148キロを誇る関西大学球界屈指の実力派左腕、天理大・森浦大輔投手です。

 天理大・森浦の投球フォームには良い意味で力感がない。スッとグラブと右足を上げて投球動作を開始し、ヒョイっとボールを投げる――。終始、落ち着いた静かなフォーム。それでも投じるボールは抜群の切れ味を備えており、その最速は148キロを誇る。

 目を引くのは、「球持ち」の良さだ。森浦は一連の投球動作の中で、打者に正対するまでの半身になる時間が長い。体の開きをギリギリまで抑えるとともに、左腕のテークバックを体で隠す。そのフォームが球持ちの良さを生み出し、ボールの出所も見づらくする。全体的に力感を感じないため派手さには欠けるが、打席内で予想と違うボールに直面し、戸惑う打者も少なくないはずだ。直球の最速148キロ、平均球速は140キロ前後ながら、打者の体感速度は、それ以上に違いない。

 「監督に“ボールを隠すように”と言われているので意識して。この大学に来てから、教えてもらいました。(打者が)ボールが見づらくなるように、意識してやっています」

 このフォームは大学入学後に身につけた。森浦は、もともと天理高時代から初速と終速の差が小さく、打者の手元で伸びるボールを投げていた。その特性に目を付けた藤原忠理監督の指導の下、大学では「ボールを隠すフォーム」を追求。指揮官は、そのイメージを「元巨人の杉内投手みたいな感じですね」と言う。力感の無いフォームから切れ味鋭いボールを投じ、打者を打ち取る――まさに現役時代の杉内俊哉(現巨人2軍投手コーチ)をほうふつさせる投球スタイルでドラフト候補にまで成長を遂げた。

 上のレベルを見据える左腕は、さらなる進化も図っている。6月に部活動が再開されてからは新球種の習得を開始。カーブ、スライダー、チェンジアップに加え、110キロ前後のスローカーブの練習を始めた。緩急を操って投球の幅を広げることが狙いで、インターネット上で見つけた楽天・岸孝之の動画を参考にしながら研究を重ねている。また、1日5食の「食トレ」にも取り組んでおり、目下の目標は4キロ増の75キロに設定。常日頃からスタミナ、球威の向上にも余念がない。

 高校時代から同学年の村上頌樹(智弁学園―東洋大)とともに奈良県内屈指の好投手として知られ、大学でも1年春からリーグ戦デビュー。3年秋リーグ戦終了時点で通算17勝9敗と実績面も申し分ない。昨年6月には大学日本代表候補合宿にも招集され、そのブルペンでは、こちらも同学年の東海大・山崎伊織が投じるスライダーに「切れがすごい」と目を見張るなど刺激を受けた。すべてを自らの肥やしとし、プロの舞台を見据える。

 ただ、プロ相手に力試しを期していた3月14日の阪神とのプロアマ交流戦は、雨天中止となった。そして今春リーグ戦も、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止を余儀なくされた。当然、スカウト陣へのアピール機会は激減。それでも森浦は「(プロ入りへ)全力でアピールするだけだと思う」と決意を新たにする。少ない機会の中で、NPB各球団の目に留まる投球を目指す。

 特に8月中旬には、3月の雨天中止分の振り替えとして、改めて阪神とのプロアマ交流戦が予定されており、森浦の登板が濃厚。地元球団への格好のアピール機会となる。その後には大学野球の集大成となる秋季リーグ戦も控えている。現状、社会人の複数チームからオファーを受けるとともに、NPB各球団からも熱視線を浴びる存在。磨き上げた脱力フォームを武器に、全力で夢への扉をこじ開けてみせる。(大阪報道部・惟任 貴信)

 ◆森浦 大輔(もりうら・だいすけ)1998年(平10)6月15日、和歌山県新宮市出身。丹鶴小1年から「新宮パワーウェーブ」で野球を始め、緑丘中では軟式野球部。天理(奈良)では1年夏からベンチ入りし、2年春、夏に甲子園出場。2年秋からエース。3年夏は県大会決勝で智弁学園に敗退。天理大では1年春からリーグ戦に登板し通算17勝9敗(3年秋終了時)。直球は最速148キロ。変化球はスライダー、カーブ2種類、チェンジアップ。50メートル走6秒4、遠投100メートル。1メートル75、71キロ。左投げ左打ち。

 ※本記事の動画は弊社YouTube公式チャンネル「スポニチチャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCCDmd01WsuFBF8n3yMjHQ1A)において6月29日正午頃、公開予定です。

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2020年6月29日のニュース