バッハ会長の中国ワクチン発言 日本蚊帳の外…聖子会長&丸川五輪相「聞いていない」

[ 2021年3月13日 05:30 ]

IOCのバッハ会長(AP)
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 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)による「中国ワクチン提供」発言について、丸川珠代五輪相(50)と東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)は12日、事前調整がなかったことをそろって強調した。22年北京冬季五輪を見据えた中国とIOCの連携に、今夏の五輪開催国・日本は“置いてけぼり”を食らう形となった。

 丸川五輪相は「事前に伺っておらず、調整もなかった」と語り、橋本会長も「事前の話はありませんでした」と認めた。バッハ会長が11日の総会で突然表明した、中国からの東京大会参加者へのワクチン提供。米ファイザー社のワクチンしか承認されていない日本国内は接種開始遅れもあり、総会ではIOC委員から組織委の武藤敏郎事務総長へ質問が相次ぐ事態となった。

 橋本会長は総会後も説明はなかったとし、「IOCと組織委は密接でなければいけないが、この問題は政府がどの国のワクチンを承認しているかによる」とコメント。丸川五輪相も「中国製ワクチンが承認された国で判断されるもの」と、接種を前提としない感染対策を強調した。一方で橋本会長は「北京五輪まで1年を切っている中国が非常に重要と捉えてIOCと話を進めたのでは」と日本が“蚊帳の外”となっている可能性を指摘した。

 欧米では中国の少数民族弾圧などを理由に北京五輪ボイコット論が浮上。中国側が“ワクチン外交”を東京にまで広げ、日本のワクチン政策にかねて不満を抱えるIOCが話に乗った可能性がある。大会関係者からは「中国の力を借りないと五輪も開けないぐらい、日本は後れを取っていると受け止められかねない」「メンツ丸つぶれだ」との声が上がった。

 また、4月中で合意した観客数上限の判断時期についても、バッハ会長が5、6月への先送りを示唆。橋本会長は「準備している方々から、早いうちに示してほしいとの声が寄せられている。4月にしっかりした方向性を出したい」と突っぱねたが、日本とIOCの“溝”が浮き彫りになってきたことは否定できない。

 《日本では未承認》IOCは12日、中国が申し出た東京五輪の出場選手向けのワクチン提供について、中国製ワクチンを承認している国・地域を対象にしたものだと明らかにした。日本では承認されていない。担当責任者はIOC総会で「保健当局が承認した国だけに適用される」と説明。IOCが推奨する接種を巡り、五輪参加国・地域の計9割が既に政府と協議を開始、または近く始めると回答したという。

 ▼三鴨広繁氏(愛知医科大大学院教授)日本で中国製ワクチンは未承認だが、承認している国もある。日本へ派遣する前に、IOCから提供を受けたワクチンを選手に接種させるかどうかは各国の判断になってくる。一方、来日後に選手が接種できるかといえば、日本政府は慎重にならざるを得ないだろう。接種後に有害事象が起きた場合、責任の所在を巡り国際問題になってしまうからだ。中国製ワクチンの有効性は正直言って分からない。

 【IOCの仰天発言】
 ▽19年10月16日 東京五輪の暑さ対策として、陸上のマラソンと競歩を札幌開催とする代替案検討を発表。開幕1年を切っており、日本は困惑。

 ▽20年3月 17日にIOCが各国競技連盟(IF)との合同会議で、東京五輪を予定通り開催する方針を再確認。「大会まで4カ月以上ある現段階で抜本的な決定を下す必要はない」と声明。しかし、24日夜に安倍晋三首相とバッハ会長の電話会談で1年延期が決まった。

 ▽20年4月 20日に東京大会の追加費用について、日本が負担することに安倍首相が同意したとの見解をIOC公式サイトに掲載。その後、組織委に「不適切」として削除を求められ、21日に修正。

 ▽21年2月 組織委会長だった森喜朗氏の“女性蔑視発言”の謝罪会見を受け、IOCは4日に「森氏は今日、発言を謝罪。問題は解決したと考えている」。しかし、9日になって「完全に不適切」といきなり断罪した。
 

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