辞任の道しかなかった森会長 “事件”があぶり出した関係者の無責任体質

[ 2021年2月11日 13:15 ]

森喜朗氏
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 JOC臨時評議員会での“女性蔑視発言”から8日目にして、ついに森会長が辞任を決意した。一連の報道の中には森会長のこれまでの功績うんぬんを伝える内容も散見されたが、今回の問題は功績のあるなしは一切関係ない。

 焦点は明快で、IOCが策定した「アジェンダ2020」に基き「男女平等」を押し進めてきた東京五輪の、しかも組織委員会のトップが公然とその理念を否定するかのような発言をしたということだ。どんな釈明をもってしてもこれを正当化することは不可能で、発言をした瞬間から森会長の取るべき道は辞任以外にはなかった。

 唯一続投の可能性があったとすれば翌日の謝罪会見だったが、そこでも森会長は「老害は粗大ごみになったのかもしれないから、掃いてもらえばいいのでは?」などと挑戦的な発言を繰り返し、沈静化どころか逆に火に油を注ぐ結果となった。この会見を機に国内外のメディアや世論が一斉に批判を展開。頼みのIOCも多額の放映権料を支払う米NBCなどからの批判を受けて支持を撤回。続投に意欲を見せていた森会長も、ついに「ジ・エンド」となった。

 今回の問題で改めて明らかになったの五輪を巡る関係者の無責任体質だ。渦中の森会長の進退について菅首相も小池都知事も「組織委が決めること」の一点張りだったが、それは違う。なぜなら、2人とも森氏を組織委会長に推薦した当事者だからだ。

 森会長の就任が決まったのは14年1月で、当時の下村博文五輪相とJOCの竹田恒和会長、そして東京都の秋山俊行副知事の3者協議で内定し、本人に要請した。つまり実質的な任命権者は国、都とJOCなのだ。もちろん、当時とはトップが入れ替わっているが、当然任命責任は免れない。にもかかわらず対応をすべて組織委に押しつけて素知らぬ顔を通す姿には心底失望した。

 コロナ禍のこの状況で本気で五輪を開催するなら、関係組織が一致団結する以外に方法はない。森会長の辞任で幕引きを図るのではなく、世界に恥をさらした今回の“事件”をどう生かすのか、世界中の目がTOKYOに注がれていることを忘れてはならない。(編集委員・藤山健二)

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2021年2月11日のニュース