姫野和樹 NZ移籍スーパーラグビー参戦へ W杯から1年「ハングリー」求め決断

[ 2020年10月13日 05:30 ]

1年前の「10月13日」。W杯のスコットランド戦で突進する姫野(撮影・篠原 岳夫)
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 ラグビートップリーグ(TL)のトヨタ自動車は12日、19年W杯日本代表でNo・8/フランカーの姫野和樹(26)が、スーパーラグビー(SR)のハイランダーズ(ニュージーランド)に期限付き移籍すると発表した。期間は来年1~6月で、シーズンが重複する来季のTLは出場しない見込み。将来の日本代表主将を嘱望される大器が、初の海外挑戦に踏み出す。

 相手からボールを奪うジャッカルを代名詞に、昨年のW杯で日本を史上初の8強に導いた男が新たな門出を迎える。ハイランダーズへの期限付き移籍が発表された姫野は、チームやファンに感謝の思いを伝えるとともに「居心地のいい日本を離れ、一からハングリーにプレーすることが、今の私にとって必要だと思った」と海外挑戦の理由を説明した。

 姫野は17年4月にトヨタ自動車入り。1年目から主将に抜てきされて活躍すると、同年11月のオーストラリア戦で日本代表初キャップを獲得した。以降、代表でも先発に定着。W杯ではジャッカルはもちろん、フィジカルの強さも世界レベルにあることを証明し、地元・豊田スタジアムで行われたサモア戦ではトライもマーク。今回の挑戦は23年W杯フランス大会に向け、さらなる進化を追い求めた結果と言えそうだ。

 これまでも多くの日本人選手が海外リーグに挑戦したが、FW第3列での成功例はない。昨年のW杯日本代表でもバックロー6人のうち、姫野と徳永祥尭(東芝)を除く4人が海外出身。TLでもポジション別で最も多くの海外選手が活躍している。技術はもちろん、サイズとフィジカルを要求されるポジションだけに、日本人の姫野が活躍すれば、前例を覆すことにもなる。

 姫野本人も「今後の日本ラグビー界にとっても、日本人が海外で活躍することは多くのことをもたらすと考えている」とコメント。現オールブラックスのフリゼルらと共闘し、ワールドクラスのバックローがひしめくラグビー王国での活躍を通じて「勇気や感動を感じてもらえればうれしい」と心待ちにした。

 今後はトヨタ自動車で練習を続けながら、今月22日にはオンライン会見に臨む。渡航は早ければ11月の予定で、まずは1桁背番号のジャージー獲得を目指す。

 《世界レベルの日常経験へ サンウルブズ除外で唯一の道》18年には日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチが指揮を執ったサンウルブズで11試合(うち先発10)に出場し、国際経験を積んだ姫野だが、海外拠点のチームで活動するのは初めて。そのサンウルブズは20年限りでスーパーラグビー(SR)から除外されており、日本の選手が日常的に国際レベルのリーグでプレーするには、海外に出るしか選択肢がなかった。

 ニュージーランドはFW第3列の選手にも高いパススキルや機動性が求められる戦術傾向があり、これらを磨くのに最適な環境。またコロナ禍でSRは大きな転換期を迎えているが、世界で最も感染拡大を抑えられている同国では、来年も国内リーグ形式で開催される可能性が高い。こうした現実的な背景も、ニュージーランド行きを後押ししたものとみられる。

 ▽ハイランダーズ スーパーラグビーに参戦するニュージーランド5チームのうちの一つで、96年創設。本拠地は南島南東部のダニーデン。11~16年にはジェイミー・ジョセフ現日本代表ヘッドコーチが指揮を執り、15年にリーグ制覇。13~16年には日本代表SH田中史朗が所属した。現在はSHアーロン・スミス、FLシャノン・フリゼル(いずれも現ニュージーランド代表)らが所属。

 ▽スーパーラグビー 96年にニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3カ国を拠点とする12チームで開始された国際リーグ。06年に14チーム、11年に15チームに拡大し、16年には18チームとなって日本からサンウルブズが参戦(20年限りで除外)。最多優勝はクルセーダーズ(ニュージーランド)の10回。20年シーズンはコロナ禍で3月途中に打ち切られ、各国が国内独自大会を開催。現在、21年以降の参加国を含む大会方式は未確定となっている。

 ◆姫野 和樹(ひめの・かずき)1994年(平6)7月27日生まれ、名古屋市出身の26歳。中学からラグビーを始め、春日丘(現中部大春日丘)で花園を経験。帝京大を経て17年4月にトヨタ自動車入りし、1年目から主将を務める。同年11月のオーストラリア戦で日本代表初キャップを獲得し、通算17キャップ、4トライ。昨年のW杯では全5試合に先発出場した。1メートル87、112キロ。ポジションはNo.8/フランカー。

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