中川部屋、消滅…親方の不適切指導か 7月場所前に角界ドタバタ

[ 2020年7月11日 05:30 ]

荷物を運ぶ中川部屋の力士たち=神奈川県川崎市幸区で10日午後4時30分すぎ(撮影・西海健太郎)
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 大相撲の中川部屋が閉鎖される見通しであることが10日、分かった。師匠の中川親方(元幕内・旭里)の暴言など不適切な指導が原因とみられる。13日に行われる日本相撲協会の臨時理事会で処分が決まる。相撲協会は同臨時理事会で7月場所(19日初日、東京・両国国技館)の開催を正式に決める方針だが、本場所の再スタートを前に出はなをくじかれる事態となった。

 複数の関係者によれば、先月の部屋での稽古中に、中川親方による弟子へのパワハラがあったという。その様子を録音していた力士が相撲協会に問題を訴え、中川親方らが事情聴取を受けた。そのさなかに、中川親方は協会に退職願を提出。協会は調査の途中として預かりとした。13日の臨時理事会では引退勧告以上の懲戒処分が検討される方向という。

 中川親方は追手風部屋の部屋付き親方だったが、17年に同じ時津風一門の春日山部屋を引き継ぐ形で中川部屋を起こした。そのため旧春日山部屋の力士の中に、中川親方の指導になじめない者がおり、師匠との関係に“距離”があったのではないかとの見方をする関係者もいる。

 中川親方を知る関係者は「口は悪いが、性格はさっぱりしている。暴力を振るうタイプではない」と話す。同部屋には元中学横綱の幕下・吉井ら有望力士がいるが、現在、別のどの部屋に移籍するか調整中だという。川崎市にある同部屋では、10日に引っ越し作業が行われた。

 相撲協会は17年の元横綱・日馬富士による暴行騒動をきっかけに、暴力問題などへの対応を強化してきた。18年には第三者機関の暴力問題再発防止検討委員会による提言を受け、暴力決別宣言。再発防止策として親方、力士への研修会を強化し、内部通報窓口を備えたコンプライアンス委員会も設置した。

 しかし、18年には元幕内・貴ノ岩が付け人への暴力で引退。昨年は元十両・貴ノ富士が付け人の頭を殴り引退に追い込まれるなど、対策はなかなか力士には浸透せず、問題が続いた。今回の中川部屋のケースは、相撲協会が本腰を入れて取り組む暴力やハラスメントの根絶が一筋縄ではいかないことを示している。

 7月場所の開催に向け慎重に準備を進めている相撲協会だが、新型コロナの感染防止対策に加え今後の対応が注目される。

 【最近消滅した主な部屋】
 ▽11年6月高島部屋 部屋に所属する力士がいなくなったため。高島親方(元関脇・高望山)は春日山部屋に移籍。
 ▽12年5月花籠部屋 経営上の理由から、花籠親方(元関脇・太寿山)が閉鎖。親方、力士らは峰崎部屋に移籍。
 ▽13年1月二所ノ関部屋 所属力士がいなくなったため。親方は松ケ根部屋と春日野部屋へ移籍。現在の二所ノ関部屋は14年12月に元大関・若嶋津が年寄名跡を松ケ根から変更して復活。
 ▽13年3月間垣部屋 病気のため満足に指導ができなくなった間垣親方(元横綱・2代目若乃花)が閉鎖。親方と若三勝(現照ノ富士)ら力士は伊勢ケ浜部屋に移籍。
 ▽15年11月北の湖部屋 当時理事長だった北の湖親方(元横綱)が死去したため。部屋付きの山響親方(元幕内・巌雄)が継承し、名称が山響部屋に変更。
 ▽18年10月貴乃花部屋 貴乃花親方(元横綱)が相撲協会を退職したため。貴景勝らの力士らは千賀ノ浦部屋に移籍。
 ▽19年9月井筒部屋 井筒親方(元関脇・逆鉾)が死去したため。力士らは鏡山部屋の一時預かりを経て陸奥部屋へ移籍。

 ◆中川部屋 元幕内・春日富士の春日山親方が97年7月に安治川部屋から独立して再興した春日山部屋が前身。12年1月、引退した元幕内・浜錦が春日山を襲名して部屋を継承。だが、元浜錦の春日山親方は元春日富士から年寄名跡証書を譲渡されておらず、16年10月に相撲協会から師匠辞任勧告を受けた。力士らは追手風部屋の一時預かりとなり、追手風部屋の部屋付きだった現在の中川親方が師匠代行として川崎市の施設で指導を開始。17年1月、中川親方が一時預かりの力士らを引き連れる形で独立した。時津風一門。

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