【岡崎真の目】羽生、ほころびすら許されない“過去”との戦い

[ 2019年11月23日 08:30 ]

フィギュアスケートGPシリーズ第6戦 NHK杯第1日 ( 2019年11月22日    札幌市・真駒内セキスイハイムアリーナ )

男子SPの演技をする羽生(撮影・小海途 良幹)
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 日本での演技は緊張するのか、スタート地点に立った羽生の表情はいつもより硬いように見えた。少し心配したが、冒頭の4回転サルコーは難なくこなした。正確に言えば流れは若干なかったのだが、その分高さが出たという感じだ。元々、高さと飛距離のバランスは黄金比に近い選手。今日は流れよりも高さの方が出た印象を受けたが、もちろんGOE(出来栄え評価)で減点されるようなものではなく、しっかりとプラスを稼いだ。

 続くトリプルアクセルは文句なし。高さも飛距離も伸びた素晴らしいジャンプで、GOEもほぼ満点という素晴らしい出来だった。次の4回転トーループ―3回転トーループの連続ジャンプは最初のジャンプを降りた後に少しかかとの方まで重心が行き過ぎてしまい、スケートが滑らなくなってしまった。一瞬、セカンドジャンプはダブルにするのかと思ったら、そこから持ち前のボディーバランスできちんと3回転トーループをつけ、しかもきちんと着氷してから次の動作につなげた。

 GOEもプラスが付いたが、もしここがいつもの流れで跳べていたらもっと加点をもらえていたはずだ。そうすれば自己ベストを超えていたに違いない。羽生にとってはGOEが2や3では物足りず、4や5でなくては不満に感じるのだろう。またそうでなければ自分の過去の成績は超えられない。ミスとも言えないようなわずかなほころびすら許されないハイレベルな闘いなのだと改めて痛感させられた。

 紀平は3回転ループの時に軸が少し外に外れてしまい、通常バックアウトサイドエッジで降りるところをインサイド気味に降りてしまった。そのため流れが滞り、マイナス評価になってしまったのが残念だった。フリーではトリプルアクセルを2本しっかり跳んで逆転Vにつなげてほしい。(ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

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