関学日本一!悪質タックル被害乗り越え、奥野MVP2冠

[ 2018年12月17日 05:30 ]

アメリカンフットボール 第73回「甲子園ボウル」   関学大37―20早大 ( 2018年12月16日    阪神甲子園球場 )

<関学大・早大>大会最優秀選手(MVP)&年間最優秀選手に選ばれた関学大・奥野(撮影・坂田 高浩)
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 学生アメリカンフットボール日本一を決める第73回「甲子園ボウル」(スポーツニッポン新聞社後援)が16日、阪神甲子園球場で行われ、関学大(西日本代表)が37―20で早大(東日本代表)を撃破し、2年ぶり29回目の優勝を決めた。パスで149ヤード、ランで49ヤードを稼いだQB奥野耕世(2年)がミルズ杯(年間最優秀選手)と甲子園ボウルMVPの2冠。悪質タックル事件を乗り越えた学生No・1司令塔が、ライスボウル(来年1月3日)で真の日本一を目指す。

 そのとき、悲劇は過去になった。勝利のカウントダウンが「0」を告げ、QB奥野の絶叫が甲子園の曇天に届く。

 「素直にうれしい。いいことも悪いこともあった大変な一年だけど、いろいろ経験できた」

 ミルズ杯&甲子園ボウルMVPの2冠。悪夢を乗り越えた先に、学生フットボーラーの頂点があった。

 今年5月6日、日大との定期戦で受けたタックルが「悪質」として日本中の話題となった。自身は脚にしびれが出て約3週間、練習を休んだ。その間には心労から「アメフットをしなければ良かった」と家族の前で涙も流した。周囲の励ましで、5月27日には練習試合に復帰。競技と真剣に向き合う時間の積み重ねが、この日につながっていた。

 その証が、腕に記した「34」の数字だ。負傷を抱える4年生RB山口から腕に書いてもらった。先輩の背番号とともにフィールドに立ち「ここまで助けてもらった。一緒に出る」と気合を入れ、躍動した。

 初めて立つ聖地の舞台で、背番号3は物おじしなかった。最初のプレーでWR阿部に11ヤードパスをヒット。試合の流れを決める先制TDの道筋をつけ、切れ味鋭いスクランブルのランが何度も早大の意表をついた。「相手のLBが下がっていたので、うまく走ってゲインできた」。甲子園ボウル出場を決めた立命大とのプレーオフ(2日)。強引にパスを通そうとして、3度のインターセプトを許した。同じ過ちを犯す司令塔ではない。ベンチを、仲間を信じ、着実にドライブを進めた。

 表彰式の後、奥野が口にした言葉に実感がこもった。「しんどい時もあったけど、周りに助けてもらった。一人では精神的に立ち直れない部分もあったし…」。悪質タックル事件では、繰り返し流される暴挙の映像に胸が痛み、競技を続ける意思も揺らいだ。奥野の才能と人柄を認め、再起を期待した鳥内秀晃監督や光藤主将らスタッフ、選手の声がどれだけ勇気づけたか――。「波瀾(はらん)万丈。人生でこんな経験をすることはない。勉強になった一年」と奥野。チームメート、そしてアメフットから愛された男が、最後は18年の主役となった。

 ▼悪質タックル問題 今年5月6日、都内で行われた関学大と日大の定期戦で、日大のDL(ディフェンスライン)がプレー終了後の関学大QBにタックル。QBは負傷した。その後も反則を繰り返したDLは退場処分に。事態を問題視した関東学連が調査を命じた。一方で日大側の調査は選手の責任とするばかりで、謝罪にも誠意がないとし、関学大QBの父は被害届を提出する事態に。タックルを行った日大選手は5月22日に会見を行い、指導者から指示があったことを明言。日大の監督、コーチは否定する会見を行ったが、両者ともに懲戒解雇された。なお、日大は今季、公式戦出場ができなかった。

 ◆奥野 耕世(おくの・こうせい)1998年(平10)6月20日生まれ、大阪府池田市出身の20歳。小1の時、「池田ワイルドボアーズ」でタッチフットボールを始め、北豊島中ではバスケ部に所属しながら、アメフットを続ける。関学高では2年時に全国制覇。ポジションは一貫してQB。1メートル71、75キロ。

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