【上水研一朗氏の目】高藤と永山 実力的にはまだ拮抗 結果を分けたのは経験の差

[ 2018年9月21日 17:16 ]

表彰式後に、メダルを手に記念写真に納まる男子60キロ級で優勝した高藤(左)と同級で銅メダルの永山
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 男子60キロ級決勝の八割方を押していたのは永山だが、勝ったのは高藤。結果を分けたのは経験の差だろう。序盤で膝を痛めた高藤だが、このアクシデントにより集中力を増した感があった。自分から先に仕掛けるそれまでの戦法を切り替え、永山の動きを誘い、延長戦では捨て身技の隅返しを警戒して後ろに引いた永山に対して小内刈り。膝を痛がっていたが、本当はさほどでもなく、逆にそれを利用して心理戦を仕掛けたのではないか、と思うほどの試合巧者ぶりだった。2度目の世界選手権の後輩に対し、自身は4度目で過去に優勝2度。リオ五輪も経験している。準決勝以外も隙のない戦いぶりが光り、立ち技から寝技への移行がスムーズになった。円熟期を迎えたとも言える強さだった。

 実績面では両者の差がまた広がったが、実力的にはまだ拮抗している。それは高藤本人が一番分かっているはず。そのため休めないし、永山も追い続ける。これは日本の男子60キロ級にとっては非常にいい構図で、東京五輪へ向けてさらに切磋琢磨してほしい。

 女子48キロ級のビロディドは長い手足を利用して間合いを取り、技を掛けられない安全圏に身を置く。そこから技を仕掛け、相手が警戒して引いたところを大内刈りや大外刈りで仕留める。渡名喜もこのパターンにはまってしまった。こういう状況では常道よりも奇策を練ることが重要で、例えば組み負けたら懐に飛び込み、大内や大外の返し技を狙ってみるのはどうか。初戦から決勝までを通じて女王を脅かした選手がいない状況で、彼女がいる限り、今後も日本にとって大きな脅威となるのは間違いないだろう。(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2018年9月21日のニュース