川内優輝 来春プロ転向表明 公務員退職へ ボストンVが後押し「金銭面の不安がなくなったのは大きい」

[ 2018年4月20日 05:30 ]

来年4月からのプロ転向を宣言した川内
Photo By スポニチ

 “最強公務員ランナー”が突然のプロ宣言だ。16日に行われたボストン・マラソンで日本人男子として31年ぶりの優勝を果たした川内優輝(31=埼玉県庁)が19日、成田着の飛行機で帰国し、来春に埼玉県庁を退職してプロ転向する意向を表明した。5年間自己ベストが更新できていない現状などを踏まえ、競技専念を決断。プロ転向後の成果次第では20年東京五輪出場にも含みを持たせた。

 ボストンから凱旋した川内の第一声はまさにサプライズだった。「来年4月から公務員を辞めてプロランナーに転向しようと思っている。もっと世界の舞台で戦いたいし、死ぬときに後悔したくなかった」。世界との戦いを熱望する公務員ランナーが行き着いた先は、安定とはほど遠いプロの道だった。

 きっかけは17年ロンドン世界陸上で、あと一歩で入賞を逃したことだった。加えて自己ベストを5年更新できていない現状にも納得できなかった。「(ファンへの)サインでは現状打破と書いているのに、私は現状維持。自分は何も挑戦していないし、それが自己ベストを更新できていない原因ではないか」。仕事との両立に限界も感じ、新たな環境を模索していた。

 プロランナーとしてすでに活動している弟の鮮輝(よしき、27)が、転向後にマラソンで自己ベストを更新したことも決断を後押ししたが、何より大きかったのは今回の優勝賞金15万ドル(約1605万円)だった。「金銭面の不安がなくなったのは大きい。最後の決め手になった」。自分のペースで競技に臨むために来年4月以降もマネジメント会社やスポンサーは付けずに、賞金を元手にプロ活動をスタートする。

 これまで以上に計画的な合宿や海外遠征が組めるようになることで、20年東京五輪代表争いの有力候補にも名乗りを上げそうだ。川内自身はこれまで酷暑が予想される東京五輪に乗り気ではなかったが、暑熱対策にも意欲を見せつつ「プロとして本気でマラソンに人生をささげたときに何かできることがあると考えられたら自信を持って挑戦したい」と心境の変化も口にした。

 プロ表明後の最初のレースはぎふ清流ハーフマラソン(22日)になる予定。退職の意向は親しい同僚にしか明かしていない。「上司にはまだ報告していない。多分、呼び出されるとは思うが仕方ないですよね。でもしっかり仕事はやり遂げます」。苦笑いしながら勤務先の久喜高(埼玉)へと向かう後ろ姿からは強い決意が感じられた。

続きを表示

2018年4月20日のニュース