殿堂入り「おしんゴルファー」のセカンドキャリアに拍手

[ 2018年3月28日 09:30 ]

第6回日本プロゴルフ殿堂の顕彰式に臨む女子プレーヤー部門の吉川なよ子
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 【福永稔彦のアンプレアブル】日本プロゴルフ殿堂の顕彰式典が3月23日、パシフィコ横浜で行われ、女子プレーヤー部門で吉川なよ子氏(69=日本ブラインドゴルフ振興協会)が顕彰された。

 日本ゴルフツアー機構(JGTO)の青木功会長から顕彰状を授与された吉川氏は「殿堂は私にとって別世界だと思っていた。ゴルフに恋して45年になる。大変なご褒美だと思っています」と感慨深げに話した。

 幼い頃に父親を亡くし詐欺被害にも遭った。生活は楽ではなかった。中学卒業後、札幌市内の時計店に就職。19歳で滋賀県内のゴルフ場のキャディーに転職。そこで初めてゴルフと出合い、23歳でプロテストに合格した。

 幼少期に苦労した経緯から大ヒットしたNHK朝の連続テレビ小説「おしん」になぞらえて「おしんゴルファー」と呼ばれた。何度も優勝争いしながら初勝利まで7年を要したことから「万年2位」とも言われた。

 1メートル59、56キロの体を目一杯使ったスイングが特徴。日本女子オープン2勝などツアー29勝。88年には賞金女王にも輝いた。しかし、甲状腺の病気を患うなど不運もあり、永久シードが与えられる30勝に届かなかった。

 それでも「おしん、万年2位と言われたけど、29勝できたし、賞金女王にもなった。これ(殿堂入り)が30勝目かなと思っています」と笑みを浮かべた。

 レギュラーツアー出場は04年が最後。現在はアマチュアを対象にしたレッスンを手がけているが、熱心に取り組んでいるのがブラインドゴルフ。東京、京都で月に3回、視覚障がい者を指導している。

 きっかけは現役時代。練習場で球を打っている視覚障がい者を見かけ「目の見えない方に何か貢献できないだろうか」という思いを抱いた。その後、ブラインドゴルフの大会に参加する機会があり指導に携わる決意をした。

 ブラインドゴルフも基本的なルールは通常のゴルフと変わらない。ただ「ガイド」と呼ばれる健常者が一緒にラウンドして、視覚障がい者をサポートするのが大きな違いだ。

 当然、指導の方法も異なる。吉川氏は「健常者なら打って(手本を)見せることができるけど、それができない。言葉で伝えるのも難しい」と始めた当初を回想する。

 そして見つけたのが体に直接触れてもらう指導法。「肩を両手で押さえてもらって肩の動きを教えたり、腰を触ってもらって腰の動きを理解してもらったりしています」。吉川氏は目を輝かせる。

 苦労した経験があるからこそ、助けを必要する人の役に立ちたいと思うのだろう。「おしんゴルファー」らしいセカンドキャリアに拍手を送りたい。(専門委員)

 ◆福永 稔彦(ふくなが・としひこ)1965年10月8日、宮崎県生まれ。89年入社。サッカーのW杯を3回、ゴルフのマスターズを3回取材。

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