パラ実業団チーム「アウローラ」社員選手こだわり、自立と認知後押し

[ 2018年3月19日 10:30 ]

パラアスリートを支える(10)

平昌パラリンピックのスキー距離男子10キロクラシカル立位で金メダルを獲得した新田
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 17日のノルディックスキー距離男子10キロクラシカル立位で金メダルを獲得した新田佳浩(37)が所属するのが、04年に発足した日本初のパラ実業団チーム「アウローラ」だ。所属選手は日立ソリューションズ(本社・東京都品川区)の社員。社員の一体感醸成に一役買おうと、イタリア語で「夜明け」を意味する名のチームを立ち上げたが、いまや日本を引っ張る存在だ。

 パラノルディックスキー日本代表の荒井秀樹監督が当時の幹部と電車で乗り合わせたことがきっかけだった。当時は日立グループ内の会社が合併したばかりで、一体感を盛り上げようというところにスキー部創設の話が出た。石川浩人事総務本部長は「社員も今では世界で戦う選手が身近にいることで刺激を受けている」と話す。

 プロ契約ではなく、あくまで社員選手にこだわる。新田もオフシーズンは営業マンとして仕事をこなす。過去にはプロ契約を打診してきたアスリートもいたというが「会社のPRが目的じゃなく、仕事を頑張りながら成長してメダルを獲るというのがポリシー」と断った経緯もある。

 14年には車いす陸上部も設立。スキー部と合わせて年間の運営費は4000万円に上るという。情報システムを扱う会社らしいサポートも行う。ソチ大会では、コースの画像データと練習用機械の床面が連動し、さながらコースを滑走するような練習ができるという装置を同大と産学連携で生み出した。

 チームが好調な一方で、石川本部長は20年東京大会以降にパラスポーツへの関心が薄れてしまうのではとも危惧する。「底辺を広げて、障がいがあっても活躍できる人が増えれば自立も認知も上がっていくと思う。それが真のダイバーシティー(多様性)を受け入れる社会になると思っている」と、パラスポーツが文化として根付くことを期待している。

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2018年3月19日のニュース