パラリンピックは五輪の前に開催した方がいいのでは?

[ 2018年3月12日 10:00 ]

平昌パラリンピックの聖火台
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 【藤山健二の独立独歩】平昌五輪に続き、平昌パラリンピックも始まった。日本勢は初日からアルペンスキーでメダルを獲得するなど、五輪に負けないメダルラッシュが期待される。ただ、残念なのはやはり五輪に比べると日本での盛り上がりがもう一つのように感じてしまうことだ。

 2年前のリオデジャネイロ夏季大会の時にも指摘したが、パラリンピックになるとメディアの露出は大幅に減る。NHKはともかく、民放は視聴率が取れなければ放送しないし、新聞や雑誌も売れなければスペースは割けない。今の日本では仕方がないことなのだろうが、必死に頑張っている選手のためにもっと盛り上げてほしいと思っている人は多いに違いない。

 パラリンピックを盛り上げる最善の策は、五輪と同時開催にすることだろう。だが、これは簡単そうに見えて難しい。国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)はまったく別の組織で、統合する計画はない。組織の問題は話し合いで何とかなるとしても、同時開催は物理的にも不可能に近い。大会の規模が倍近くに膨れあがってしまうからだ。当然、大会期間は今より更に延びる。選手や関係者の数も大幅に増えるので、宿泊施設も足りなくなる。現在の規模でも五輪を開催できるのは首都クラスの大都市に限られるのに、これ以上規模が大きくなれば立候補する都市は一つもなくなってしまうだろう。

 冬季大会は夏に比べれば規模は小さくなるが、それに合わせて地方の小都市で開催されることが多いので事情は同じだ。スキーなどはコース設定も違うし、雪の中に車いす用の動線も必要になるので、やはり同時開催は難しい。

 だとすれば、現状での最善の策は開催の順番を入れ替えることではないか。つまり、先にパラリンピックを開催し、できるだけ期間を空けずにそのまま五輪を開催するようにするのだ。五輪で盛り上がりがピークに達した後のパラリンピックでは、何となく付け足しのように感じてしまう人もいるだろう。「前座扱いだ」という批判もあるかもしれないが、それならパラリンピックから五輪という流れにした方が今よりもっと盛り上がるような気がするのだが…。

 もちろん、あくまでもこれは現状でのベストであって、いずれ両者は統合されなくてはならない。組織の問題や規模の問題など解決しなくてはならない問題は多いが、それでも健常者も障がい者もない真の「共生社会」を実現することは我々の義務であり、五輪とパラリンピックの統合こそがその象徴となるはずだ。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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