伊調がパワハラ被害、栄強化本部長を告発 困惑の栄氏「ちゃんとお話しする」

[ 2018年3月1日 05:30 ]

16年リオネジャネイロ五輪レスリング女子58キロ級で決勝のマットへ向かう伊調と栄強化本部長
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 レスリング女子で史上初の五輪4連覇を達成し、国民栄誉賞を受賞した伊調馨(33=ALSOK)が日本レスリング協会の栄和人強化本部長(57)から繰り返しパワーハラスメントを受けたとして、レスリング関係者が1月に代理人弁護士を通じて、内閣府の公益認定等委員会に告発状を提出していたことが28日、明らかになった。平昌五輪の日本選手団の活躍で沸いた日本スポーツ界にとって、大きなダメージとなる可能性もある。

 平昌五輪での日本選手団の大活躍に続き、20年東京五輪マスコットも決定。機運が高まりつつあるタイミングで、指導者とアスリートの軋轢(あつれき)が発覚した。レスリング関係者が五輪4連覇の伊調に対するパワハラに関し、伊調の恩師である栄強化本部長を告発したのは1月のことだった。

 告発状によると、スタート地点は、04年アテネ、08年北京と伊調が五輪連覇を達成したあと。姉の千春さんとともに、一度は現役引退も示唆した伊調はカナダへ留学。帰国後は練習拠点を愛知県大府市の至学館大から東京へと移したが、これに栄氏が激怒したとしている。

 東京に拠点を移したあとの伊調は、近隣の大学や自衛隊への出稽古のほか、男子の合宿にも参加。当時、男子の強化スタッフだった田南部力コーチに指導を仰ぐ形で技術を磨いた。当時、女子強化委員長だった栄氏は、田南部コーチに対し伊調への指導をやめるように忠告。そんな状況でも、伊調は12年ロンドン五輪で3連覇を達成した。

 しかし、ロンドン五輪後、栄氏は3スタイル(フリー、グレコローマン、女子)全てを統括する強化本部長に就任。その後、伊調が男子の全日本合宿に参加することを禁じ、田南部氏が指導拠点としていた警視庁への出入りも禁止したという。希望通りの練習ができない中で、伊調は16年リオデジャネイロ五輪で女性アスリートとして世界初の五輪4連覇を達成し、国民栄誉賞も受賞したのは周知の事実だ。

 日本協会関係者は「告発状に関して内閣府からの問い合わせなどはない」としたが、内容が確かなら“アスリートファースト”をうたう20年東京五輪に向け、由々しき事態といえる。一方で、栄強化本部長はスポニチ本紙の取材に対し「伊調から何かを言われたこともない。五輪4連覇に向け、しっかり見守ってきたつもり。伊調がこんなことを言うとはとても思えない」と話し「ちゃんと皆さんにお話しする機会を改めてつくりたい」と話した。

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