情熱にあふれる暁斗 原田雅彦氏がエール「W杯総合王者獲って」

[ 2018年2月22日 11:30 ]

平昌冬季五輪 ノルディック複合個人ラージヒル ( 2018年2月20日 )

ノルディック複合ラージヒル個人ではレースを引っ張っりながら、力のあるドイツ勢に追いつかれた渡部暁(右)
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 【メダリストは見た】スキージャンプ・長野団体金 原田雅彦氏

 いやー、悔しかったですね、渡部暁斗選手。今や世界のスキー複合選手の中でもトップの実力を持っていると思うんですよ。ジャンプもうまいし、距離だって強い。ノーマルヒルだって、本当は金メダルだったと思いますよ。たまたま普段は飛ばない選手が風に当たって、タイム差がなくなっただけで。ラージヒルもそう。ドイツ勢が集団でスタートしたから、追いかけやすくなった。ジャンプの飛距離は作戦じゃないですから、不運といえば不運。これも五輪といえば、それまでなんですけど。

 実は私、全国中学大会の複合競技に出たことがあるんです。今風に言えば、ジャンプと“二刀流”ってとこですか。前半首位に立ったんですが、距離はめちゃくちゃ(笑い)。もちろん、距離の練習もして出場したんですけど。筋力の専門的なことは分かりませんが、ジャンプ選手にはジャンプに必要な筋力があり、これを究極に突き詰めると、距離には悪影響があるかもしれません。渡部暁斗選手自身はジャンプも距離も「究極ではない」と言っているそうですが、私から言わせれば、複合選手は究極のバランサーです。

 ノルディックスキーにはジャンプ、クロスカントリー、複合と種目がありますが、複合はジャンプの仲間だと思っています。過去には阿部雅司さんや荻原健司さんが、ジャンプの大会でジャンプ選手に勝って優勝したこともあるんですが、やっぱり「複合選手には負けられない」という気持ちになったもんです。そうやって高め合う、やっぱり仲間なんです。

 繊細で器用な選手が多いジャンプに比べると、複合選手はパワフルで不器用というのが私の印象です。でもね、渡部暁斗選手は違うんです。ジャンプを見ればジャンプ選手と同等の技術を身につけている。空気抵抗を最小限にして飛び出す角度や、空中で浮力を得るスキーの使い方、素晴らしいです。何度か話したこともあるんですが、ストイックで、競技を突き詰める情熱にあふれてる。まだまだ、実力を伸ばしていけると思います。

 W杯を中心としたシーズンを送るスキー選手は、五輪で勝負できるかできないか、W杯で分かるもんです。その意味では個人総合首位で迎えた平昌、渡部暁斗選手にとって大きなチャンスだったでしょうね。でも、もう一つ言えるのは、五輪王者はたった1つの試合の勝者。スキー選手にとって、世界中で戦った結果のW杯総合王者こそが王者、という感覚があるんです。今年は総合王者のチャンス。ぜひ、がっちりつかんでほしいです。

 もちろん、五輪の金メダルが欲しい、という気持ちは今後のモチベーションになるでしょう。競技の普及や発展のために、五輪は絶大な力を持つ舞台。「強い選手だった」という記憶を、記録に焼き付けるのが五輪だとも思います。29歳は私が長野五輪を経験した年齢。そこから私は2度、五輪に出場しました。渡部暁斗選手なら、もっといける。そして、偉大な選手として記録に残ってほしい。今は心の底から、そう願っています。

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