羽生、復活劇呼んだ“心技体”3つのポイント 異例選曲、進化4回転、食生活改善

[ 2018年2月18日 10:10 ]

平昌冬季五輪 フィギュアスケート男子フリー ( 2018年2月17日    江陵アイスアリーナ )

男子フリー、演技を終え氷に手を置く羽生
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 鮮やかな復活劇で五輪史に残る連覇を達成した羽生には、緻密な戦略と少しの運があった。勝利の鍵となった“心・技・体”3つのポイントとは――。

 ◎異例の選曲 慣れたプログラムで高い演技点

 羽生が今季選んだSP「バラード第1番」とフリー「SEIMEI」は、いずれも2季前のプログラム。異例の選曲だった。ANAの城田憲子監督には「(五輪シーズンは)4年間で一番いい作品をやるべき」という考えがある。

 城田監督が日本スケート連盟の強化部長を務めていた06年トリノ五輪。荒川静香にシーズン途中でフリーの曲を以前の「トゥーランドット」に変更させ、金メダルに導いた経験があった。新鮮味がないことが評価に影響する懸念もあったが、羽生も「滑っていて心地いい。自分でいられるプログラム」と迷いはなかった。

 羽生の狙いは「新しい曲はあれやってこれやってと難しい。このシーズンにそんな時間はない。スタートラインを変える」と完成度を高めて、いい演技点を引き出すことだった。本来は試合で滑り込んでプログラムの完成度を高めるが、ケガを負った今季はできなかった。しかし、今季3試合目の五輪でも全体トップの演技点をマーク。慣れ親しんだ選曲が、心を平静に保ち、窮地を救う鍵となった。

 ◎進化4回転 幼い頃から多種類ジャンプ意識

 14年ソチは4回転ジャンプSP1本、フリー2本で制した羽生は平昌にSP2本、フリー4本で挑んだ。右足首の故障のため、当初目指していたフリー5本からは減らしたが、4回転ジャンプ技術の進歩が連覇につながった。

 多種類の4回転ジャンプを駆使する若手が台頭する中、羽生も16年に世界で初めて4回転ループに成功。現在は4種類の4回転ジャンプを跳べる。原点は小2〜高1まで仙台と横浜で指導を受けた都築章一郎コーチの教えだ。77年世界選手権銅メダルの佐野稔を指導し、世界で初めて5種類の3回転ジャンプ成功に導いた同コーチは、幼い頃から「将来は4回転の時代だよ。全種類を跳ぶんだよ」とイメージさせた。

 4回転はリスクも伴う。同コーチは「(NHK杯の公式練習中では)十分に跳ぶ体勢をつくる前に跳んじゃった。ルッツを早く披露したいという気持ちが強すぎた気がします。でもその挑戦する気持ちが成長につながっている。それが彼の武器」と見守る。羽生は昨夏、同コーチに「(4回転半が)できそうな感じになりつつある」と楽しそうに語ったという。次なる挑戦は史上初のクワッドアクセルだ。

 ◎食生活改善 量やバランス見直し筋肉量UP

 4回転ジャンプの本数が増え、よりハードになったプログラムに対応するために、羽生は体づくりも見直した。

 「筋量が減ると、ちょっと後半持ちにくい。食事の量を頑張って増やした」。以前は痩せやすかったが、味の素のサポートを受けて食に対する意識を変えた。体重と体脂肪率、体調、疲労度、練習時間などを毎日チェック。体重を落とさないようにタンパク質を取れるスープや、ナッツ、ヨーグルトなどを夜食としてこまめに取った。大会中も鍋料理などバランスのいい食事を心掛けた。

 以前は食が細かったが、拠点のトロントではお気に入りの日本食料理店でボリュームのあるカルビや寿司などをたいらげるようにもなった。JOC(日本オリンピック委員会)の日本選手団プロフィルは14年ソチの1メートル71、52キロから1メートル72、57キロになった。お尻や太腿は確実にひとまわり成長。たくましくなったアスリート体形で、4回転ジャンプ4本のハードなフリーを演じきった。

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