神鋼ベッカー引退 悩み抜いた末の決断 今後はフォワードコーチに

[ 2018年1月21日 09:43 ]

神戸製鋼・ベッカー
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 ラグビー・トップリーグ神戸製鋼のロック、アンドリース・ベッカー(34=南アフリカ)が20日、引退し、神戸製鋼のフォワードコーチに就任することが分かった。この日、神戸市内でのファンイベントに出席し、思いを口にした。

 「引退は簡単な判断ではなかった。数カ月前から悩んだ。家族と相談し、また悩んで…。人生の中で最も難しい判断だった。とはいえ、どのラグビー選手も自分の判断でリタイアの時期を決めている。私は、故障をして、ドクターストップがかかった状態で引退をしたくないというポリシーがあった。メンタルも体力もまだバッチリだけどね」

 確かに、衰えを感じさせなかった。今季も11試合に出場し、大黒柱として存在感を示した。ラインアウトの頭脳であり、フォワードの核だった。さらに、2メートル8、118キロの巨体ながら、10代の頃はバックスだったというのがうなずける走力でチャンスを演出。ラインアウトをシングルハンドキャッチして観衆を驚かせたこともあった。しかし…。

 「まだできる半面、15年もプロとしてやったという思いもある。これからの人生、子どもと一緒にゴルフをしたりしたいしね。体がいい状態のうちにユニホームを脱ぐことを決断したよ」

 南アフリカ代表29キャップ。神戸製鋼には選手として5年間在籍した。プレー面での一番の思い出は、「2年前に静岡でヤマハに勝った時だね。私が過ごした中でチームとして1番力を発揮できた試合だった」と長いひげを触りながら振り返った。2015年リーグ戦第6節、ヤマハ発動機(ヤマハ)に43―14で勝利した試合だった。

 現役の思い出は尽きない。「いい仲間と過ごしたことも忘れられない思い出」。神戸製鋼内には様々なチーム内のグループがあり、毎月第1火曜日に会食をするメンバーがいた。フランカー橋本大輝前主将、No・8谷口到、SHアンドリュー・エリス(ニュージーランド)、SH佐藤貴志と、料理を前にしながらチームのことを熱く語り合った。

 「ファーストチューズデーグループでご飯を食べに行くことが本当に楽しかったね」

 次のステージは指導者として、神戸製鋼を支えることになる。これまでの実績から、セットプレーを中心としたフォワードを教えることになる。

 「スマートでフィジカルに優れた選手を育てたい。可能性がある選手はたくさん揃っている。でも激しさがある選手は状況判断が悪かったり、判断がいい選手は激しさが物足りなかったりする。両方を備える選手を育てたい。それには、ハードワークをするしかない。たくさんの血と涙を流さなければ、力はつかない」

 ドクターストップがかかるような状態でも、試合に出場するような無骨なタイプだった。腰掛け来日の助っ人とは一線を画したチームマンだった。だから、仲間からの信頼は厚かった。ファンからも人気があった。この日のイベントではサインを求める人の大行列ができた。

 本人は大の親日家だ。15年ワールドカップは南アフリカ代表のオファーがありながら、神戸製鋼でのプレーを優先して断った経緯がある。

 「日本に住んで一番魅力を感じているのは、人だよ。本当に親切な人が多いんだ。例えば、どこか家族で出掛けて行き先が分からずに困っていると、誰かが必ず手伝ってくれる。本当に素晴らしい文化だ」

 立場は変わっても、神戸製鋼のために力を注ぐことは同じ。強いフォワードを作り上げていく。

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2018年1月21日のニュース