箱根駅伝の全国化に賛否両論。実現までには高いハードルも

[ 2017年11月16日 09:00 ]

今年1月の第93回箱根駅伝で3連覇を達成し、アンカーの安藤を出迎える青学大
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 【藤山健二の独立独歩】正月の風物詩、箱根駅伝の全国化が検討されているという。100回目の記念大会となる2024年に関東以外の大学の参加を認め、それ以後も「全国大会」として開催していく。参加方法や出場校の数などは今後検討するとしているが、平均で軽く20%を超える視聴率をたたき出す人気イベントだけに、早くも賛否両論が噴出している。

 学生3大駅伝のうち出雲と伊勢(全日本)は全国に門戸を開いているが、箱根に出場できるのは関東の大学だけだ。主催が関東学連なのだから当たり前だが、なぜかただのローカル大会が一番人気が出てしまい、いつの間にか全国の有望高校生がこぞって関東を目指すようになった。それに伴い関東と他地域とのレベルの差は広がる一方で、箱根の全国化を求める声は以前からあった。

 確かに全国化されれば一極集中の現状が打破され、学生界はもとより、低迷の続く男子マラソン界のレベルアップにつながる可能性もある。そう考えると、ただ「歴史や伝統があるから」というだけで反対するのはどうかと思うが、ではすんなり全国化が進むかというと、ハードルは高いと言わざるを得ない。

 現時点ではまず23年の予選会に関東以外の大学を参加させ、一定の条件をクリアすれば本戦に進めるという方式が有力だ。だが、すでに今年は予選会に49校が参加している。各校10〜12人が一斉に20キロを走り、上位10人の合計タイムで競う方式なので、全国の大学が集まれば人数はさらに膨れあがり、安全面での不安が残る。

 これは本戦でも同じで、もし現在の参加20校をさらに増やすとなると、影響は多方面に及ぶ。交通整理を担当する警察サイドが難色を示すことも十分考えられる。参加校が増えれば1位と最下位とのタイム差は今以上に開くだろう。トップの選手が通過した後、最下位が通過するまでいつまでも公道を閉鎖しておくわけにはいかないので、繰り上げスタートを多用せざるをえない。レベル差を考慮せずにただ出場校を増やすだけでは、へたをすると2区や3区で早くも繰り上げスタートになったり、最後までタスキをつなげない途中棄権が続出するおそれもある。

 箱根駅伝のPR効果は抜群で、箱根を走れば受験生が増えるのはもはや常識だ。全国の大学が競うということはそれだけ本戦出場が狭き門になることを意味し、関東の大学が積極的に賛成するとも思えない。

 24年までにはまだ7年ある。箱根駅伝はもはや陸上を愛するすべての人の共有財産だ。全国化するにしてもしないにしても、さまざまな人たちのさまざまな意見に真摯に耳を傾け、一番いい結論を導き出してもらいたいものである。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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