陸上界も来季から世界ランク制を導入へ 日本への影響は?

[ 2017年11月6日 09:30 ]

今年8月、陸上世界選手権から帰国し、獲得メダルを披露する(前列左から)小林快、荒井広宙。(後列同)藤光謙司、桐生祥秀、飯塚翔太、多田修平
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 【藤山健二の独立独歩】国際陸連(IAAF)はこのほど、世界ランキング制度を導入することを決めた。来年3月までに詳細を詰めた上で運用を開始し、19年の世界選手権(ドーハ)や20年東京五輪の参加基準として利用する。世界ランキングはすでにゴルフやテニスなど多くの競技で導入されており、陸上も他の競技と同様に各大会の規模や重要度に合わせてポイントを配分し、順位に応じて五輪や世界選手権への出場権を与えることになるのだろう。

 これまで五輪や世界選手権では、各国の国内連盟が参加標準記録(IAAFが設定)を突破した選手から自由に代表を選んでいた。標準記録を破るのに必要な大会の指定はなく、一定の条件さえ満たせば記録会レベルの大会でも可能だった。ランキング制が導入されればそれなりの規模の国際大会への出場が義務づけられるので、陸上界全体のレベルが上がるのは間違いない。

 今までは五輪や世界選手権以外で有力選手が直接対決することはほとんどなかったが、ポイントの配分次第では有力選手が勢揃いする大会が年に複数回開催される可能性もある。もちろん、費用の関係などで国際大会に参加できない国や地域もあるので、普及の面からも何らかの配慮は必要だろうが、それでも、IAAFのセバスチャン・コー会長が言うように「ランキング制度によって世界の競技会が体系的になる。選手やファンもどの大会が重要なのか明確に理解することができるので、五輪や世界選手権に向けての準備がしやすくなる」のは確かだ。

 当然、ランキング制の導入は日本の陸上界にも大きな影響を及ぼすことが予想される。ポイントを稼ぐためには、まず指定の国際大会に出場しなくてはならないので、今まで以上に海外でのレースの機会を増やす必要がある。欧米や中東などへ遠征するとそれ相応の費用がかかることもあって、これまで海外での試合に参加するのは実業団や学生の一部に限られていたが、これからはもっと多くの選手が気軽に海外に遠征できる環境を整えなくてはならない。当然、日本陸連などによる資金面での支援も必要になるだろう。

 ランキング制が定着し、全体のレベルが上がることで逆に低迷が続くマラソンなどの出場枠が減らされたのでは元も子もないが、海外での試合が増えることは日本勢にとっても決して悪い話ではないはすだ。東京まであと3年。あれこれ考えている暇はもうない。これから起こるすべてのことをプラスに捉え、一つでも多くのメダルが獲れるようにポジティブ思考で頑張りましょう。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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